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GT500シーズンレビュー:ニッサン編「苦しい時があったからこそ、この終盤があった」チーム首脳、ドライバーが語るV字回復とニスモの底力

2017年11月17日 18:32  AUTOSPORT web

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2017年のスーパーGT第8戦もてぎでポール・トゥ・ウィンを飾ったMOTUL AUTECH GT-R
シーズン前半はおもにエンジン面など、想定外のトラブルでライバル陣営の後塵を拝すことになったニッサン陣営。2017年は年間で投入できるエンジン基数が昨年までの3基から2基に減らされたこともあり、エンジン本体の強度不安でブースト圧を下げての走行を強いられることになった。

 それでもライバル陣営に先駆けて第4戦SUGOから対策を施した2基目のエンジンを投入するやいなや、エース車両のMOTUL AUTECH GT-Rの成績は瞬く間に向上。

 最終戦でシーズン初勝利を挙げるだけでなく、ドライバーズタイトル、そしてチームタイトルともに、トップまで2ポイント差までパフォーマンスを挽回させた。この浮き沈みの激しかった1年を、ニッサン陣営はどう振り返るのか。

「今年は、いろいろな意味で良かったんじゃないかなと思っています。結果的にはチャンピオンは獲れませんでしたし、前半戦は非常に苦しい戦いをしてファンのみなさまにもご心配をお掛けしてしまったりもしましたが、その苦しい時があったからこそ、この終盤があって、来シーズンに向けて非常にいい流れをつなげていけるような1年になったと思っています」と話すのはGT-Rの開発責任者であり、MOTUL GT-R擁するニスモの鈴木豊監督。

 最終戦のもてぎ戦では、MOTUL GT-Rのロニー・クインタレッリが、2番手にコンマ9秒差(!)という驚異的なスピードで予選ポールを獲得。鈴木監督が「予選でロニーのあのタイムを見たら、レースで負ける訳にはいかないなと思いました」と話すように、タイヤのライフが懸念されたなか、危なげなくトップを守って今シーズン初勝利を飾った。

 2ポイント差でタイトルには届かなかったMOTUL GT-R。シーズン前半の不振が悔やまれる結果になったが、鈴木監督はポジティブに1年を総括する。

「前半戦ではエンジン面で問題があるということを気づけていなかった。そこに気づけたことが、今のパフォーマンスにつながっているので、2基目のエンジンから改善することができました」と鈴木監督。

「この最終戦もてぎの結果を見る限り、レクサスを追い抜けたと思っています。もちろん、いろいろなサーキットの特性もありますので、ここだけで判断はできませんし、彼らも今年の結果だけで満足するとは思っていませんので、来年はさらに努力をして強いクルマを作ってくると思うので、ウチも負けないように作っていかなきゃいけないと思っています」

「来年に向けては、課題の克服は今年ですべて終わったわけでないですし、まだ残っている部分もあります。ただ、そこが今年、かなり理解できたということが、来年に向けてもっと強いクルマを作ることができるベースになりますし、そして作らなきゃいけないなと感じてもいます」

「今年掴んだものもしっかりと効果が出ているので、そこにプラスしてまだ着手できていない部分、規則で許されている範囲で開発を進めて、来シーズンは最初から強いクルマを作り上げたい。今年はニスモしか勝てていませんので、4チームともクルマの力をしっかりと引き出せるように、ソフト面も含めていろいろ進めていきたいと思っています」と、鈴木監督は今シーズンの苦難がニッサン陣営にとって来季への大きな布石となることを示唆した。

 クインタレッリとともにMOTUL GT-Rのステアリングを握る松田次生にとっても、今年は苦労が多かった分、得られたものは大きかったようだ。

「開幕戦はレクサスがトップ6を独占して、タイム的にも(レクサスに対し)予選で1秒以上のギャップがありました。苦しいシーズンが始まるなと思ったなか、全スタッフが一生懸命クルマを開発してくれて、ミシュランタイヤも、それに応えてくれました。昨年、最終戦のこのもてぎで3連覇のタイトルを逃したということもあって、ミシュランもすごくいいタイヤを作ってくれました」と、優勝後に話した次生。

 今季についても「序盤の開発遅れが一番大きな要素だった。それでもエンジンが2基目になったSUGOから特性も変わって、ドライバーとして運転しやすくなった」と振り返った。

「今までのなかで、一番苦しい状況で(ロニー・クインタレッリ選手と)互いに高めあうことができました。チャンピオンは獲れませんでしたけど、全員でいいレベルに来たという状況だと思います。この流れを維持してレクサスに奪われたチャンピオンを取り戻したいですね」と2018年シーズンに向けた抱負も語っている。

 今季の敗因が明確なだけ、来季に向けての修正、パフォーマンスの増加分は確実なGT-R勢。今シーズンのMOTUL GT-Rのピット作業の速さやレース戦略のうまさは、相変わらず高レベルにあり、序盤に失敗した開発も、むしろシーズン中にV字回復を果たしただけに、組織としての底力の強さを印象づけることにもなった。

 このオフの取り組み次第では、一気に2018年の主役になってもおかしくない存在だ。