VASCヴァージン・オーストラリア・スーパーカーに参戦するニッサン・モータースポーツは、先に意思表明していたフォードに続き、2018年に向けた新たな空力規定のホモローゲーション変更を「行わない」と表明。L33型アルティマは再公認を経ず、現行の空力パッケージで契約最終年を戦うこととなった。
2013年にトッド&リックのケリー・ブラザーズが運営するチームとのジョイントでシリーズ参戦を果たしたニッサンは、2年目となる2014年、翌2015年と、それぞれ空力パッケージの新たなホモロゲーションを取得。それ以降は15年型のエアロパッケージを継続使用してきた。
その後も細部の改良や小変更は続けられては来たものの、ニッサン・モータースポーツとケリー・レーシングは現行パッケージのまま、長期契約最終年となる2018年シーズンに臨むことを決めた。
一方、来季もファルコンFG-Xで参戦するフォード陣営も空力特性の変更は行わず、現行モデルのまま継続参戦すると表明。ただし、アルティマとファルコンの2台は12月末に開催されるホモロゲーションテストには参加し、唯一新型モデルに切り替わるZB型のホールデン・コモドアとともに、トラックでの走行を行う予定となっている。
「我々はホモロゲーションの再申請を行わないため、マシンに対するどんな空力特性の変更も実施することはできないが、フォード・ファルコンFG-Xとともに新たなホールデンのマシンと対峙するのは、とても興味深い経験になるだろう」と語ったのは、ニッサン・モータースポーツのジェネラルマネージャーを務めるスコット・シンクレア。
「同じトラックを走行し、他のチームとともに新型コモドアZBとの空力性能における相対的数値を比較するのは大変有意義だ」
「我々はダンロップの2018年スペック確定を待ちつつ、オフシーズンの間はシャシーとエンジンの開発を通常のプログラム通り進めていくことになるだろう」
その一方で、2018年の開幕に向け“9台目”のL33アルティマ・シャシー製造に入っているケリー・レーシングは、2019年以降の継続参戦に向けニッサン・モータースポーツと「より真剣で前向きな協議」に入ったとも明かした。
来季で契約最終年を迎えるニッサンとしても、2013年をもってオーストラリアでの販売を終了しているL33型アルティマでの参戦を再考するチャンスともなり、5シーズンでわずか2勝に終わっているプログラムの再構築を図る契機となる。
新たにニッサン・オーストラリアのCEOに就任したステファン・レスターは、グローバルでの意思決定と、VASCで新たに導入されるNext-Gen(Gen2)規定を考慮に入れ「すべての選択肢がテーブル上にある」とコメントした。
その発言に対し、シンクレアも「それらの議論は、これまでの数ヶ月より真剣に行われるようになっている」と説明する。
「最終的な意思決定は来年の中ごろになるだろうが、そこにはいくつかの方向性が残されている。いずれにせよ、2018年の開幕に向けてはL33アルティマの準備を全力で進めていくことに間違いない」とシンクレア。
ルノー・ニッサン・ミツビシのアライアンス内において、F1でワークスチームを運営するルノーと、そのルノーから新たにフォーミュラEの活動を引き継ぐこととなったニッサンは、さらに日本国内でのGTプログラムと、オーストラリアでのスーパーカー・プログラムというふたつのGTカテゴリーを抱える形となる。
それについても、豪州CEOのレスターはニッサンにとってのバサーストの重要性を説いた上で「もちろん、これまでに自分自身が関わった経験がなければ、これらのプログラムやスポーツを理解するのに時間が掛かるものだ」と、上層部の意思決定プロセスに理解を示した。
「彼らはモータースポーツ以外に頭を悩ます要素に囲まれているわけだからね。それは必ずしも迅速なプロセスとはならないかもしれないが、私は彼らと健全な議論を進めている。ニッサン・オーストラリアにとってバサーストがいかに重要か、理解は得られているし熱心な関与を示してくれているよ」
現行のV8、4ドアサルーンの規定に対し、5ドアや2ドアクーペ、V6ターボまでも許容する新たなレギュレーションの元で、フォードは2019年にも自社のスポーツカー・アイコン、『マスタング』での参戦を計画していると噂されており、ホールデンもまた来季2018年からワイルドカードとしてV6直噴ターボの投入を予定している。
ニッサンとしても販売終了車種での参戦から、同社のスポーツカー・ラインナップの頂点に位置するフラッグシップ、『GT-R』へのスイッチがなされるのかが注目されている。