2017年11月17日 11:43 弁護士ドットコム
未成年の子どもを持つ親の中には、子ども名義の通帳を作り、預金をしているという人もいるだろう。しかし、その銀行口座は親の離婚時にトラブルのもととなることもあるようだ。
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配偶者の不倫を理由に離婚を考えている人が、「通帳名義は子どもであるが、届出印が父親(配偶者)のもの(三文判でも)だった場合、子どもの財産とは見なされないのでしょうか?」と、弁護士ドットコムの法律相談コーナーに質問を寄せた。
通帳名義が未成年の子どもであっても、親が管理して、預金していたような場合、その財産は子どものものとならないのだろうか。離婚の財産分与でどう処理されるのか。山本直樹弁護士に聞いた。
「財産分与において、子ども名義の預金口座が誰の財産になるかについては、一律にどのようにするか決まっているわけではありません。個々の事例ごとに事実関係を検討して、その口座に入っている預金の性質が、実質的に夫婦の共有財産といえるかどうかを判断することになります。裁判所も、個別具体的な事情を検討して、事案ごとに異なる結論を下しています」
裁判所はどのように判断しているのか。
「裁判所の判断事例を見ると、まず、婚姻期間中に得られた夫婦の収入等が預金されている預金口座は、通常は、子ども名義の口座であっても財産分与の対象になるとされています。
したがって、夫婦のいずれかが、財産分与の前に夫婦共有の財産を隠すために、子ども名義の預金口座を開設して入金したとしても、財産分与の対象になります。
他方で、夫婦の収入を預金した口座から子ども名義の口座に預金していた場合に、子に対する贈与の目的であったために、財産分与の対象から除外された事例があります。
このように、親の離婚に伴って子どもの口座が誰のものになるのかは、個別具体的に検討していく他ありません」
子ども自身がお小遣い、祖父母からのお年玉やお祝い金などを入金しているケースもありそうだ。
「子どもが自分で管理している預金(小遣いなど)であれば、子ども自身の財産として、財産分与の対象外となる可能性が高いといえますし、祖父母などからのお祝いや子ども自身が受け取るべき手当について財産分与の対象としなかった裁判例もあります」
なお今回、相談を寄せた人は、届出印が子ども自身のものではないことを気にしているようだ。
「口座に入ったお金が誰のものかを検討する上で、届出印が誰のものであるか、誰が届出印を管理しているかといった事実は検討されることの一要素ではあるかもしれません。ただ、裁判所は、あくまでそのお金が夫婦の財産なのか、子の財産なのか、その実態を検討しますので、この事実だけで誰の財産になるかが決まるわけではないのです」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
山本 直樹(やまもと・なおき)弁護士
「交通事故」の被害にあわれた方をマジメひと筋にサポート。相談では「賠償額の相場」など、法律になじみのない方にも分かりやすい説明を心がけている。解決事例は、裁判専門誌にも掲載の実績。安心してご依頼いただいている。
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