F1ジャーナリストの今宮純氏が独自の視点でドライバーを採点。週末を通して、20人のドライバーから「ベスト・イレブン」を選出。予選やレースの結果だけにとらわれず、3日間のパドックでの振る舞い、そしてコース上での走りを重視して評価する。今回はブラジルGP編だ。
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☆ ピエール・ガスリー
4戦目も“ポジションアップ・レース”、グリッド19位から12位。現在のルノーPU競争力を考慮すれば、難しい位置からよくレースをまとめている。とくに今回印象に残ったのはブルーフラッグ時の対応。譲り過ぎでタイムロスすることなく、ラインを選び(タイヤを冷やさず)、抜いていった相手をフォロー。こうしたプレーは今後自分が逆の立場、抜く側になったときかならず活きる。それは11年HRT時代を経てきたダニエル・リカルドの時と同じだ。
☆ ニコ・ヒュルケンベルグ
セクター2を攻める近道ではなく、早道を知っているのだろう。予選8位タイムにはかなり驚かされた。さすが10年にウイリアムズでPPを獲っただけある。なんとか10位1点追加、アラン・プロストさんならその価値が分かるはずだ。
☆☆ セルジオ・ペレス
5戦ぶりの予選でエステバン・オコンに先行、FP1は走れずともセットアップを手早く整えた。最終盤に演じた“トリプル・バトル”、0.137秒差の9位ゴールとなった場面はスリリング。もう少し早めにフェルナンド・アロンソのスリップストリームから抜け出る手もあったのではないか?
☆☆ フェルナンド・アロンソ
しかし、そうはさせなかったアロンソ(インディ500での経験が役に立ったか)。最後の12コーナーからの“ヒルクライム”で絶妙なライン・ワーク。敵の動きを先読みする巧さ、派手なブロック・アクションではなく緻密なミリメートル単位の動きだ。
☆☆ フェリペ・マッサ
「やればできるじゃないか」、久しぶりにミスが無い全力集中レースを見せてもらった。後半セクター2エリアでは防戦一方、曲がらず止まらないマシンを操りながら直線で一息。アロンソの追撃がマッサ母国ラストランに花を添えた。
☆☆ バルテリ・ボッタス
ポールシッターにはそれだけプレッシャーがのしかかるものだ。今年3回目、スタートで“心がホイールスピン”。1コーナー減速でベッテルにあおられ抜かれた。オーストリアGPではPPからフライングすれすれのダッシュ、それを再現できなかった。とは言えQ3アタックで1周を完成、甘口ではあるがPPに☆を。
☆☆☆ マックス・フェルスタッペン
昨年に続き最速ラップをマーク。今年も“インテルラゴス・タイムトライアル”を制した。コーナーでのボトム・スピードは見るからに高いのだが攻め続けるとピレリのグリップがダウン。彼が“BS対ミシュラン時代”に現れていたら……、と思わせるブラジルGPの5位であった。
☆☆☆ ダニエル・リカルド
若いチームメイトと違い、しぶとさが取り柄。渋いオーバーテイクを連続、ハミルトンのような直線アドバンテージはないので、リアルなブレーキング殺法を駆使。縁石を果敢にまたぎ、インから刺しこむプレーを誉めたい。6位は今季完走レースのワーストでも、リカルドここにあり。
☆☆☆☆ ルイス・ハミルトン
予選で起きたスピン・アウトについては『決勝分析』で触れたように、車体のボトミング症状がきっかけだった。W08が発生する強いダイナミック・ダウンフォースのバランスが崩れ、リヤから滑った。天性のテールスライド・コントロール感覚を有する彼がああなったのは、「魔が差した(?)」としか言いようがない。
自分のそのミスを自分で償うメンタルパワーでオーバーテイクレースを披露。ハイペースを維持しつつ、タイヤもケアする4冠王のスキルが光る。
☆☆☆☆ キミ・ライコネン
62周目からハミルトンが1分11秒台連続で追ってきたとき、キミは1分12秒台でギャップがみるみる目減りしていた。焦点は67周目。12秒台ペースでも1コーナー減速で奥まで踏ん張り、フロントタイヤのロックアップを誘った。おそらくハミルトンには細かな振動が発生、それを見極めファイナルラップでは逆に0.359秒速いラップで3位フィニッシュ。このラスト10周の攻防戦でハミルトンに競り勝ったベテラン。
☆☆☆☆☆ セバスチャン・ベッテル
2位ポジションから1コーナーまでは340m。第9戦オーストリアGPのリベンジ、“最前列スタート対決”に勝つと逃げを打ったベッテル。レッドブルリンクでは「フライングだろ」と猛抗議、ある意味で因縁の対決だった。
スタートがすべてと言える展開ではあるが、路面温度59度に高まり、フェラーリ二人はタイヤ温度管理の苦しさから解放された。ベッテルが勝ったハンガリーGPは55度、モナコGPは50度、コース特性もさることながら今年の跳ね馬は熱い馬場を好む。フェラーリのシーズン5勝は2010年以来、あと1戦、チーム通算230勝がかかっている。