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ザ・コレクターズの可能性に終わりはないーー結成30年の貫禄示した中野サンプラザ公演

2017年11月16日 16:52  リアルサウンド

リアルサウンド

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 「『Free』(1995年)の頃、後ろ3列くらいが寂しかったね。2階は誰も居なかった……ここは1階(しかない会場)なんだって自分に言い聞かせながら」と当時を振り返り、会場を見渡しながら感慨深く語るリーダー・加藤ひさし(Vo)。2017年11月3日、実に22年ぶりとなるTHE COLLECTORSの中野サンプラザ公演。『THE COLLECTORS 30th Anniversary TOUR “Roll Up The Collectors”』ツアーファイナルはソールドアウト、2階席後方までオーディエンスの熱気に包まれた。


参考:THE COLLECTORS、30年かけて辿り着いた晴れ舞台ーー武道館のステージで見せた“ブレなさ”


 ステージには、昨年の日比谷野外大音楽堂、今年の日本武道館と、すっかりおなじみとなった“THE COLLECTORS”の電飾。古沢’cozi’岳之(Dr)のカウントで、古市コータロー(Gt)、山森“JEFF”正之(Ba)が自分の存在を確かめるように音を鳴らす。ジーンズにTシャツ、ジャージというラフな格好の古市がブリリアントにアルペジオを弾き出すと、ロンドンの街を全身で表したようなラッピングペーパー風スーツをキメ込んだ加藤が颯爽と登場。ライブは「地球の歩き方」でスタートした。すっかりスマートな体型になった加藤のステップはいつになく軽やかで、伸びやかな声を会場目一杯に響かせる。


 続いて「ロマンチック・プラネット」「MILLION CROSSROADS ROCK」を軽快に図太く鳴らしていく。ステージ4人の立つポジションはいつもと変わらない。ライブハウスでもホールであっても同じ距離感にいる。一見こじんまりとしたようなこの配置もメンバーの関係性を表しているようであり、結束しながら強靭なグルーヴを生み出していくように思える。そのぶん、いつもより広く空いたステージ上のスペースは、弾きながらブラっと歩く古市には都合がいいようで、心地よいカッティングに合わせて大きく左足を蹴り上げる。


 今年3月に初となる日本武道館公演を開催したTHE COLLECTORS。30周年の大舞台ともいえる公演の直後ともなれば、バンドもファンも休憩モードになってしまうことも珍しくない。しかし、THE COLLECTORSは休むことなどいざ知らず、ますます勢いを増しているのだ。キャリア史上最多32本のライブとなった本ツアーは大盛況。この中野サンプラザ公演も先述の通りソールドアウトし、急遽機材席を解放したほどである。


 本ツアーは、武道館の延長ではない。軸となるのは、昨年12月にリリースしたアルバム『Roll Up The Collectors』の楽曲たち。古市の劈くギターとそれに呼応するような呻きをあげるJEFFのベース、赤と青の照明が印象的だった「悪の天使と正義の悪魔」、古市の咽び泣くようなギターと加藤のマラカスさばきに会場が酔いしれた「That’s Great Future ~近未来の景色~」。そして、加藤が「レアなナンバー」と紹介した「孤独な素数たち」、古くからのファンを喜ばせた「問題児」、軽快なリズムとカラフルなポップさに合わせて躍り出た3人がフロントに並んだ「Stay Cool! Stay Hip! Stay Young!」など、普段あまりライブで演奏されない楽曲も次々と披露。“30th Anniversary”の通り、偏ることない新旧織り交ぜながらのセットリストが進行していく。


 30年分の楽曲を並べながらも、不思議と懐古的な部分を感じさせない。ずっと追ってきたファンも、最近知ったファンも、新旧の楽曲たちを同じように楽しむことができる。時代や流行に左右されず、己を貫いてきたバンドだからこそ為せる業。貫禄を充分に見せつけながらも、今なお衰えぬ若々しさを放ってくる。それは、ロックへの初期衝動を持ったまま30年走り続けてきた、THE COLLECTORSの生き様なのだ。


 「ゴンドラに乗って降りてきたかった」「セリから飛び上がってみたかった」、と相変わらずの加藤と古市の自由なやりとり。12月13日と14日に行われる『新木場サンセット 2017』の話題から、「ロビンソン」(スピッツ)のフレーズで会場を沸かせ、真っ赤なバーンズのギターを抱えた加藤が「A Hard Day’s Night」(The Beatles)のさわりをサクッと披露。すると、加藤が「俺たちの歌のほうがいいね(笑)」と語り、古市がメインボーカルを務める「マネー」へとなだれ込んだ。自由奔放なMCと流し職人芸的なミュージシャン魂、そんな緩急をつけながらのライブ運びもTHE COLLECTORSの魅力だ。


 土着的なリズムとファズギター、赤と緑の照明がサイケデリックな彩りを与えたインストナンバーから、古市が大きくストロークをキめ、フィードバックに誘われるように「東京虫バグズ」へ。ラストスパートは、「NICK! NICK! NICK!」「ノビシロマックス」とアッパーチューンを畳み掛け、「がんばれG.I JOE!」で本編は終了した。


 ライブ中盤のMCで話題になった、「Burn」(Deep Purple)のリフを豪快にかき鳴らし始まったアンコール。「世界を止めて」で徐々に湧き上がっていく昂揚からの「僕はコレクター」。恒例のコールアンドレスポンス、「30周年イベント、今日でようやく終わります」「32公演、どこも飛ばすことなく、最高のライブができた! ありがとう!」「後ろの電飾、みんな覚えてるよね? 日比谷野音で1年前に使って、武道館で使って、今日使って、ようやくペイできました! ありがとう!」と、ツアーでの感謝の意を述べながらも話にオチをつけるのが、実に加藤らしい。


 「コータローくんがもう一曲やりたいっていうから」とここで、セットリストにはなかった「恋はヒートウェーヴ (Love Is Like A) HEAT WAVE」を最後の最後に贈り、小粋なビートにオーディエンスは皆、身を委ねた。


 肩を組み深々とお辞儀する4人。6月から続いた長いツアーと、昨年から続いた“30周年イヤー”は幕を閉じた。


 終わってみれば、今日も、野音も、武道館も、THE COLLECTORSにとっては特別なものではなく、いつも通りのライブだったんだと。あらためてそんなことを思った。MC中、いきなり「あ、そうだ、来年はクアトロ、12か月連続でやります」と古市がサラッと口にしたように、彼らはいつだって肩肘張らずにもの凄いものを投げつけてくる。『THE COLLECTORS CLUB QUATTRO MONTHLY LIVE “LAZY SUNDAY AFTERNOON”』ーー来年1月からだなんて、すぐじゃないか。今年1月に正式加入した「coziの修行も兼ねて」と言っていたが、セットリストを毎回変えてくるつもりなのだろうか。


 THE COLLECTORSは、キャリア30年を超えてもなお、可能性に終わりはない、“ノビシロマックス”であり続けるのだ。(冬将軍)