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鑑賞者も作品の一部に、レアンドロ・エルリッヒ過去最大の個展が開幕

2017年11月16日 09:03  Fashionsnap.com

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撮影もOK、鑑賞者参加型のインスタレーション作品「建物」 Image by: FASHIONSNAP
アルゼンチン出身のアーティスト レアンドロ・エルリッヒの過去最大規模となる個展「レアンドロ・エルリッヒ展:見ることのリアル」が、11月18日に森美術館でスタートする。鑑賞者が実際に作品の一部として参加できる体験型の大型インスタレーションをはじめとする44点の作品を紹介し、その8割が日本初公開。開幕に先駆けて11月16日の今日、関係者向けに内部が公開された。

 今回の個展はレアンドロ・エルリッヒの初期から新作までの作品がそろう自身最大規模の展覧会。体験型作品を数多く展開するレアンドロの作品を通じて、実際に身体を用いて体験することの大切さ、仕掛けを開示することによる思い込みへの揺さぶりや気付き、そして「見る」という行為の曖昧さを自覚し、既成概念を取り払い自分なりに真実を掴み取ることの重要性などを発信する。
 会場では、冒頭の展示作品で暗闇の中でボートが水に浮かんでいるように見える「反射する港」や、ドアの覗き穴に"無いはずの空間"が立ち現れる「隣人」、誰も登場せず何も起こらない殺風景な部屋を監視カメラ25台が映し出し、監視社会の現実化を表現した「部屋(監視I)」、鏡を活用し迷路のような空間を創出した「試着室」、自分の姿が映る鏡とそうでないものが並ぶ美容院を体現した作品「美容院」などを公開。エレベーターの内と外が反転した「エレベーター」は今回のために再制作され、日本製メーカーのボタンが使用されている。また、床に横たわった建物のファサードに寝転がり壁にぶら下がっているように見える参加型インスタレーション「建物」は新バージョンを展示。作品によっては撮影やSNS投稿が可能となっている。
 体験型で楽しめる作品の背景には社会的なメッセージも込められており、隣のマンションの住人のさまざまな日常生活が窓越しで眺めることができる自身初のビデオインスタレーション「眺め」では、都会で暮らす人々は誰もが見るだけではなく見られる対象になり得ることを示唆。また、黒一色の部屋に入った鑑賞者を廃墟化した学校の亡霊のように映し出す新作「教室」は、過疎化や少子化などの問題も考えさせられる作品になっている。
 森美術館の南條史生館長は「シンガポール・ビエンナーレ」でレアンドロの作品「美容院」と同様の作品を鑑賞してから10年以上にわたり展覧会の開催を構想。人が感動するためには驚きが必要と前置きし、「非日常的な体験をもたらしてくれるところが、彼の作品の醍醐味。多くの方に現代美術の中にも"こういうものもあるんだ"と驚いてもらいたい」と話した。
 内覧会と同時に開かれた発表会にはレアンドロ本人も出席。四半世紀にわたり発表してきた作品が一堂に解する展覧会は自身の中でも特別な機会だといい、自身が同展で伝えたいメッセージは「エントランスをくぐっていただいた瞬間から始まる」と来場を呼びかけた。また、ゲストとして本田望結&紗来姉妹も登壇した。会期は11月18日から来年4月1日まで。
■レアンドロ・エルリッヒ展:見ることのリアル会期:2017年11月18日(土)~2018年4月1日(日)会場:森美術館住所:東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー53階開館時間:10:00~22:00/火 10:00~17:00     *いずれも入館は開館時間の30分前まで     *会期中無休入館料:一般1,800円、学生(高校・大学生)1,200円、子供(4歳―中学生)600円、シニア(65歳以上)1,500円
公式サイト