2017年11月15日 10:52 弁護士ドットコム
2020年の東京オリンピックを見据えて、注目を集める「民泊」。民泊新法と称される「住宅宿泊事業法」も成立して、具体的な運用ルールの整備が進められている。ただ、そもそも管理規約において民泊営業が不許可とされている物件で、民泊を営業してしまい、トラブルに発展するケースもある。
【関連記事:「事故物件ロンダリング」次の次の入居者には告知せず契約…見抜く方法は?】
例えば、弁護士ドットコムの法律相談コーナーには、民泊営業をしていたことが発覚して、退去させられたという人から「退去後に貸主から内装費の負担を求められています」との相談が寄せられた。民泊営業不許可という管理規約に違反していたとみられる。
貸主は、「借主は、当初から住居使用ではなく、民泊を営業するつもりで部屋を賃借していた」として、内装費も支払うべきだと主張しているそうだ。
借主は、今回のように貸主から追加で請求された費用についても支払う義務があるのか。貸主は、内装費の名目がダメでも、ペナルティ的な形でお金を請求することは可能なのか。中島宏樹弁護士に聞いた。
「管理規約において民泊営業が不許可とされている物件で、民泊営業を行うと管理規約違反となります。
内装費の中身が不明ですが、今回の貸主の主張は、管理規約に反して民泊営業をしていたのであるから、『自己使用の場合と比べて、より多くの原状回復費用を負担せよ』との趣旨と解釈されます」
そんな主張は有効なのか。
「原状回復費用は、あくまでも、対象物件の使用によって劣化・損耗した部分を原状に回復させるために必要な費用です。
管理規約に反して民泊営業をしていたとの事実をもって、直ちに、より多くの原状回復費用が認められるというわけではありません。
例えば、民泊営業によって、対象物件が自己使用の場合と比べて、雑に扱われ、劣化・損耗が激しくなったといった場合には、原状回復義務の範囲が拡大し、借主はより多くの原状回復費用を負担しなければならないことがあり得ます」
では、そのような事情がない場合には、貸主は借主に対して追加の支払いを請求できないということか。
「もし、管理規約において、違反した場合の罰則として罰金が定められていた場合には、貸主は借主に対して、その管理規約に基づいて算出された罰金を請求することは可能であると思われます。
民泊新法の制定に伴い、マンション標準管理規約についても、民泊営業の可否を明示するよう改められています。
今後、民泊営業を行うに際しては、借主は、あらかじめ管理規約の規定を十分に確認し、貸主や既存住民とのトラブルが起こらないよう、注意する必要があります」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
中島 宏樹(なかじま・ひろき)弁護士
京都弁護士会所属。弁護士法人大江橋法律事務所、法テラス広島法律事務所を経て弁護士法人京阪藤和法律事務所京都事務所に至る。京都弁護士会:刑事委員会(裁判員部会)、民暴・非弁取締委員会、法教育委員会、消費者問題委員会、日本弁護士連合会「貧困問題対策本部」
事務所名:弁護士法人京阪藤和法律事務所京都事務所
事務所URL:http://www.keihan-towa.com/