2017年11月15日 10:52 弁護士ドットコム
電車内でiPhoneのAirDrop機能を使って、見ず知らずの他人にアダルト動画を送りつけるいたずらを紹介するスレッドが立ち、話題となった。
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「AirDrop」を使えば、近くにいる相手に写真やビデオ、URL、連絡先などを無線で共有できる。お互いのiPhoneでAirDropを有効にすることで使用でき、対象は「連絡先のみ(連絡先に登録している人のみ)」と「すべての人」を選択することができる。「受信しない」と無効にしておくことも可能だ。
試しに編集部でAirDropを使ってみた。自分の端末に保存している動画を送ると、相手のiPhoneに「●●のiPhoneが1本のビデオを共有しようとしています」という文面が出てくる。その画面には、動画の最初の部分(プレビューの画像)が表示され、辞退・受け入れるのボタンが出てくる。「受け入れる」にすると、すぐ再生画面に切り替わるという仕様だった。
スレッドでは、「それ犯罪やで」「ポルノ爆弾」などといったコメントが寄せられている。実際にこの機能で公共の場でアダルト動画などを送信した場合、何らかの罪に問われる可能性はあるのだろうか。福本洋一弁護士に聞いた。
「iPhoneのAirDropを用いて周りのiPhoneに『わいせつ物』に該当するような動画を送信する行為は、刑法175条1項のわいせつ物頒布罪に該当する可能性があります」
福本弁護士はそう指摘する。AirDropでの送信行為は「頒布」に該当するのだろうか。
「『頒布』については、判例は『不特定又は多数の者の記録媒体上に電磁的記録その他の記録を存在するに至らしめることをいう』としています。
そのため、電車内等の公共の場所で多数の者に対して『わいせつ物』に当たるような動画を送信し、受信者のiPhone内に保存できるようにすれば該当するものと思われます」
編集部でも試してみたが、受信者が送られた動画を見るには、辞退・受け入れるのボタン操作が必要だ。これでも「頒布」に該当するのだろうか。
「受信者が『受け入れる』という操作を行うことで送信された動画が再生されることになりますが、判例においては、わいせつ動画の有料配信サイトに関して、『不特定の者である顧客によるダウンロード操作を契機とするもの』であっても『頒布』に当たると判断されていますので、犯罪の成立に影響を及ぼす事情にはならないと思われます」
「わいせつ物」にあたらないような動画であれば問題ないのか。
「『わいせつ物』に該当しない動画でも卑猥な内容であれば、AirDropによるそのプレビュー画像の送信行為自体が、各都道府県における迷惑行為防止条例の『人に対し、公共の場所又は公共の乗物において、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような卑わいな言動をすること』に該当するとみる余地もあります。
そもそも上記のような一方的に動画を送り付ける行為は、犯罪に該当するか否かに関係なく、ユーザーに対して便利な通信機能の利用を躊躇させ、そういったサービスを提供する企業に対して過重なセキュリティ対策を求めることにもつながるため、不快な動画を送られた人だけではなく、社会全体に対しても多大な迷惑をかけていることを認識していただきたいと思います」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
福本 洋一(ふくもと・よういち)弁護士
弁護士法人第一法律事務所パートナー弁護士、システム監査技術者。2002年同志社大学大学院修了、03年弁護士登録。IT関連法務、個人情報・営業秘密等の情報管理体制の構築・漏洩対応等を取り扱っており、日本経済新聞社の2015年度「企業が選ぶ弁護士ランキング・情報管理分野」にも選出されている。
事務所名:弁護士法人第一法律事務所
事務所URL:http://www.daiichi-law.jp/