昨年大ヒットし、興行収入82億円超を記録した「シン・ゴジラ」が、11月12日に地上波で初放送された。SNSでは大いに話題になり、もちろん、筆者もしっかりとテレビで本作を存分に味わった。
劇場でも2回、その後BDも購入して何度も観ている本作だが、地上波は地上波で別腹と味わえたものである。
僕は元々どうしようもない怪獣オタクである。怪獣めいたものなら何から何まで大好きだ。ここ10年は市販の怪獣フィギュアだけでは満足できず、パテで自作している始末。はっきり言ってここまで怪獣に狂っている物書きなんてそうはいない。ライター界隈では間違いなく、5本の指に入ると自負している。
そんな僕に、担当編集から「怪獣映画でオススメがあったらコラムで紹介して」との指令が下された。せっかくの面白そうな要請だったので、乗っかることにする。今回は「シン・ゴジラ」を地上波で目の当たりにして、怪獣熱が多少くすぐられた人に観て欲しい怪獣映画を、いくつか紹介してみようと思う。(文:松本ミゾレ)
東宝系ならやっぱり初代ゴジラは押さえておいて、後は好みでどうぞ
「シン・ゴジラ」が大成功した理由は色々あるが、それをいちいち書いているとクソ長い作文になるので、省く。この作品に触れて、他にもゴジラ映画を観てみたいと思ったなら、シンプルに原点を観るのが一番かもしれない。
1954年公開の「ゴジラ」。本作に登場する初代ゴジラは、水爆実験によって人類の生息圏にまで追いやられ、やがて東京を混乱に陥れる世紀の大怪獣として描かれる。口からは放射能を含有した熱線を吐き散らし、自衛隊の攻撃も意に介することはない。「シン・ゴジラ」では、本作のエッセンスをリスペクトした場面がそこかしこに隠されているため、それを発見して楽しむのも一つのポイントとなるだろう。
また、別の切り口になってしまうが、怪獣映画の醍醐味は怪獣同士の対決にもある。ゴジラシリーズには魅力的な敵怪獣も非常に多いが、一つの作品内で多数の怪獣の活躍を楽しみたいなら、1968年の「怪獣総進撃」や2001年公開の「ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃」などは、比較的どこのレンタル屋でも陳列されている。配信サービスでも取り扱っていることが多いので、手を伸ばしやすい。
大映、円谷、果てはハリウッドにも傑作怪獣映画は多数ある!
言ってみれば怪獣映画の王道はゴジラシリーズで、正直、世界中のどんな怪獣映画が束になろうと、それは揺るがない。ただし、ゴジラシリーズ以外の怪獣映画も、かなりの傑作がある。
中でも平成ガメラ三部作のうちの一つ、1996年に公開された「ガメラ2 レギオン襲来」は大いにオススメしたい。本作で登場するレギオンという怪獣は、甲殻類のような見た目で、シリコン化合物で体が形成され、ガス圧で体を動かしているという奇妙な生命体。
繁殖のために地球に飛来した宇宙怪獣で、主役のガメラが再三に渡って後手に回るほどの強豪だ。ガメラシリーズではガメラがとにかく苦戦を強いられるほど敵が強く描写されるが、この作品でもその作風はしっかり踏襲されている。手に汗握る攻防がとにかくアツい作品と考えてもらって構わない。また、96年の作品の割にはチープな特撮場面がかなり少ないのも特徴だ。
特撮で怪獣と言えば、ウルトラマンシリーズも忘れてはならない。ウルトラマンと言えば基本的にはテレビで観るものだが、劇場公開作品も数多く存在している。とりわけ観てもらいたいのが、2006年公開作品の「ウルトラマンメビウス&ウルトラ兄弟」だ。
ウルトラ兄弟のうち、初代ウルトラマン、セブン、ジャック、エースの4人が、放映当時の役者込みで出演するという時点で怪獣オタクとしては無条件に賞賛すべき作品。くわえて敵も歴代ウルトラマンを苦しめた強豪揃いで、花形的立ち位置の究極超獣Uキラーザウルスの強さも大いに引き立っている。
さらにハリウッドにまで目を向けると、現在続編が着々と準備中の「パシフィック・リム」(2013年公開)も、そのうちの一つ。ジャンルにSF怪獣映画とあるように、異次元から地球に送り込まれてくる様々な"Kaiju"と、先進各国の保有する巨大ロボットとの攻防がメインとなる。
そうそう。お隣の国、韓国にも侮れない怪獣映画「グエムル-漢江の怪物-」(2006年公開)がある。怪獣と言うよりは怪物のような存在ながら、その奇妙な姿は唯一無二の存在感をバツグンに発揮しており、十分に怪しい獣として確立されている。冒頭の襲撃シーンは出色の完成度で、本当にここだけでも観て欲しいところだ。
……と、この調子であと50作品ぐらいは紹介していきたいんだけど、残念ながらここで筆を置きたい。これ以上書いてしまうと際限がなくなり、体内炉心の核エネルギーが暴走し、メルトダウンが生じてしまう可能性すらある。今回はこの辺りに留めるとして、また怪獣映画にスポットが当たったときにでも、続きを書いていきたい。