せっかく決まった就職内定を断るのは忍びない。だが自分の人生、より良い方を選ぶのは当たり前だ。しかし「選ぶ余地」の無かった者からすれば、複雑な思いも湧く。
11月13日、就職情報大手のリクルートキャリアが、10月に行った調査から「内定辞退率」が約6割だと発表した。これを各報道機関が伝えると、ツイッターでトレンド入りするほど話題となっていた。(文:okei)
氷河期世代は「そんな時代になったのね」と複雑な思いをつぶやくが
調査は、2018年卒業予定で「リクナビ2018」に登録済みモニターの大学生・大学院生を対象にインターネットで実施。2083人からの回答を集計した。10月1日時点での内定率は92.1%で、同年同月の90.6%と比べて1.5ポイント高くなっている。
その中で内定を辞退した人の割合は、10月時点で64.6%。6割以上の人たちが「就職先を複数社から選べた」ことになる。過去2年の3月卒業時点、2016年(63.9%)と2017年(64.1%)よりも高く、同程度の割合になるまでの時期も5か月ほど早くなっている。
こうした報道を受け、ツイッターは「内定辞退」が一時トレンド入り。現在40代くらいの就職氷河期世代は、複雑な思いをつぶやいていた。
「本人たちや世の中的にも色々な要因があるのはわかる。 ただ、超氷河期で自己否定の嵐の中泣きながら就活した身からすれば、選択肢が存在する就活が羨ましいわ…そんな時代になったのね」
メール1つで簡単に落とされ、リーマンショック時には企業側からの「内定取り消し」も相次いだと振り返り、いま採用に苦しんでいる企業は"文句を言う筋合いじゃない"と冷ややかな声も散見された。
だが、売り手市場なのは新卒ばかりではない。ツイッターには、面接5回こなしたら内定が3つ出たという40代女性の投稿もあった。もちろん人によるのだが、ごちゃごちゃ愚痴っているくらいなら「いざ転職」だろう。
「アンケートは内定が決まった人の方が答え易い」という指摘も
一方で、今年の新卒就活者が苦しい胸の内を明かすことも多い。「企業を選べるほど景気が良くなったのかというだけでなく」と前置きし、
「いざ内定してみたら説明会では触れられなかった福利厚生や社員寮での対応があまりにも闇過ぎて恐怖を感じて……てのもあるかなと。そんな理由で悩みながらも泣きながら内定辞退の手紙を出したワシ」
内定が決まったと喜んでも、徐々に「ブラックな本性」が見えてきたなら入社前に断るのは当たり前だ。「学生もブラック企業を警戒している」「待遇を改善すればいいだけ」という意味の指摘をするツイートも目立った。実に多くの人たちが、様々な思いを巡らすニュースだったことが分かる。
確かに近年、学生にとって有利な傾向が続いている。しかし、9月21日の日本経済新聞のコラムでは、「就職情報会社が出す情報と実際の学生たちとは肌感覚が違う」、「アンケートは内定が決まった人の方が答え易い」という指摘もあった。信憑性を疑うわけではないが、数字的に高めの割合になることが予想されるので、参考程度に捉えておくのが良いのかもしれない。