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安室奈美恵の主題歌は『監獄のお姫さま』をどう盛り上げる? 作品との親和性を考察

2017年11月14日 08:02  リアルサウンド

リアルサウンド

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 デビュー25周年を記念したオールタイムベストアルバム『Finally』が予約だけでミリオンセラーを突破した安室奈美恵。その中に収録されている新曲「Showtime」がTBS系火曜ドラマ『監獄のお姫さま』の主題歌としてオンエア中だ。ドラマのシーンがインサートされ、安室とダンサーたちが鉄格子風のセットをバックに囚人服を思わせる赤いツナギで踊るコラボMVがアルバム発売直前にYouTubeで公開され話題となったが、ドラマサイドからの熱烈なオファーにより実現した主題歌だけあって、クドカンこと宮藤官九郎が脚本を手がける“おばさん犯罪エンターテインメント”である作品全体のテンションを上げる役目を果たしている。


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 ドラマ『監獄のお姫さま』がオンエア前から注目を集めていたのが、その豪華なキャスト陣だ。女子刑務所で知り合った4人の受刑者を演じているのは小泉今日子(馬場カヨ)、菅野美穂(勝田千夏)、坂井真紀(大門洋子)、森下愛子(足立明美)で、ドSな刑務官に満島ひかり(若井ふたば)と個性派女優が集結。この5人が一丸となって殺人を依頼した犯人に仕立てあげられた(と思われる)夏帆(江戸川しのぶ)の冤罪を晴らすため、その婚約者であり若くしてEDOミルクの社長に成り上がった伊勢谷友介演じる板橋吾郎を監禁して追い詰めていくというストーリーである。


 ドラマは6年前の「自立と再生の女子刑務所」での出来事を描いた過去と出所した彼女たちの現在が交錯していくパズルのような構成。塀の中というヘビーなシチュエーションをコミカルに描き、非現実的に見せているのもクドカンらしい。日課の“ざんげ体操”があったり、食事のときに必ず歌う曲があったり、座布団の上に座って森下演じる足立明美が作る特製デザートパンをこっそり食べるのが楽しみだったりと、どこかゆるいのが笑える。“わちゃわちゃしたい”というのもこのドラマのキーワードのひとつ。年をとっても女子が集まればぺちゃくちゃ騒々しいというのは今も昔も変わらずというわけで、事件を彼女たちがどのように解決していくかはまだ謎だが、『監獄のお姫さま』を見ていて印象に残るのはおばさんたちのたくましさと生命力である。


 キョンキョン演じる馬場カヨは夫を刺してしまったことで愛する息子と離れ離れになっている境遇。自分の写真を刑務所の中に持ち込んではいけないというルールを破ったことがバレて刑務官の若井に「過去には戻れない」と没収されると、息子と映った写真をまっぷたつに破り、息子の写真だけを持つことを許可される。脱税で捕まった菅野演じる勝田は獄中でもメルマガやブログを更新するために独居房をレンタルオフィスのように使い、極道の妻・足立は夫の罪をかぶっているにも関わらず飄々としたムードを崩さない。鬼のような刑務官・若井も仕事が終われば合コンに行き、超ミニスカートで挑発するといった一面を見せるなど、逆境や厳しい環境の中でもタフに自分のペースで生きる女性たちの姿が生き生きと描かれている。


 “更正するぞ!”と気合を入れるオープニングの場面を始め、そんな女たちが結束する場面で流れる「Showtime」で主題歌を担当することについて安室は、TBS公式ページで「とても光栄に思っております。ドラマで繰り広げられる“リベンジ計画”を“ショータイム”に例え、女性らしくポップな楽曲に仕上げました。この楽曲で、ドラマをより盛り上げるお手伝いができれば嬉しいです」とコメントを発表。


 力強くポジティブなダンスチューンとなった「Showtime」で安室は<女はみんなActress><誰にも譲れないの 私たちのGreat pride>と歌っている。幾多のプレッシャーや壁を乗り超え、最後まで自分らしくあり続けるためにも引退という潔い結論を自ら出したであろう安室もまたタフな女性である。


 馬場カヨの口癖が「冷静に」であるように時に人生の重大な局面に怖気付きながらも、わちゃわちゃせずにはいられない女性たちにエールを送る曲が「Showtime」なのである。(山本弘子)