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小泉今日子、満島ひかり、夏帆……『監獄のお姫さま』クドカン脚本で輝く“女優力”

2017年11月14日 06:02  リアルサウンド

リアルサウンド

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 小泉今日子を筆頭に、満島ひかり、夏帆、坂井真紀、森下愛子、菅野美穂と、華やかな女優陣が宮藤官九郎(以下、クドカン)脚本のもとに集った、火曜ドラマ『監獄のお姫様』(TBS系)。コメディタッチでサスペンスフルな展開もさることながら、何よりも彼女たちの“わちゃわちゃ”チームワークが最高のドラマだ。


(参考:『監獄のお姫さま』は『カルテット』に続く“行間案件”? 小泉今日子が向き合う罪と毒


 クドカン脚本作品らしい、小ネタと振り切れたハイテンションが面白い本作。冒頭で並べた女優たちの名前をざっと眺めただけでも、ひとりひとりが、ひとつの作品を牽引できるほどの粒ぞろいであることが分かるはず。適材適所に配された女優陣のパワーに、毎話唸る。主人公“馬場カヨ”を演じる小泉は、主役としてこのメンツを引っ張りつつ、母として、妻としての悲哀を見せ、菅野演じる“財テク”は自慢の甘い声を活かしたつかみ所のないキャラクターかと思いきや、誰よりも人情に厚い面を見せる。クドカン組ベテランである森下は“姉御”という名に相応しい頼もしさで、“女優”役の坂井は(いい意味で)しょうもなさ過ぎるネタにも果敢に挑み続ける。若き名女優の観のある2人においては、夏帆はキーパーソンである“姫”として物語をかき回し、満島は“先生”という役柄通りにクールにチームをまとめ上げ、ドラマの展開を引き締めるのだ。


 もちろん“問題の男”板橋吾郎を演じる、伊勢谷友介の翻弄されっぷりも見逃せない。彼が民放ドラマに顔を見せるのは、フジテレビ系『女信長』(2013)以来であり、民放連続ドラマに名を連ねるのは、本作が初めてである。本作の中ではお色気担当であり、収拾のつかない“わちゃわちゃ”にツッコミを入れる役割も担っている。多少シリアスな場面でもかまわず真顔でふざける池田成志のコメディリリーフ的役割や、クドカン作品常連である塚本高史の抜群の安定感も本作の大きな見どころだ。


 思い出すだけでも呆れてくるのが、第1話での板橋吾郎誘拐のくだり。そうそうに露見するおばちゃんたちの鈍臭さ、間の悪さ、詰めの甘さにどうなることかと思っていたが、これがどうにもならないのだから面白い。過去と現在はテンポよく転換されるものの、いずれにおいても肝心のおばちゃんたちのテンポが鈍い。しかし彼女らの、この本筋からの脱線の反復にこそ、本作の魅力があるように思える。


 番組公式ホームページ内のインタビュー(http://www.tbs.co.jp/pripri-TBS/interview/p01_01.html)で、「女性から見て宮藤官九郎が書く“おばちゃんトーク”はどうですか」という問いに、菅野が「宮藤さんが “書きたい” とおっしゃっているのは、言葉とかではなくて、盛り上がっているおばさんたちのサマなのかなって。でもそこに宮藤さんの言葉のセンスがあわさった時にどうなっていくのかワクワク感があります。会話のテンポや芝居の呼吸が大事になると思うので、6人で力を合わせてやっていきたいですね!」と答え、「スカッと突き抜けるようなおばさんたちの元気さは、今の世の中に必要かもしれないですね!」と小泉がコメントしていた。たしかに菅野が語るように、勝手に“わちゃわちゃ”盛り上がる彼女たちのサマは、永遠に見ていられそうなほどに微笑ましい光景。むしろドラマの本筋の展開以上に、このチームワークがクセになってしまうのも事実なのだ。


 しだいに秘密が明らかになっていく怒涛の展開。彼女たちがそれぞれの人生パートで見せる、さまざまな「女」の姿は、年齢、キャリアを積み上げてきた彼女たちだからこその“女優力”で圧巻の見せ場を今後もつくっていくに違いない。彼女たちのこのハイテンションに、負けずについて行きたいところだ。


(折田侑駿)