2年連続でFIA-F4を制した宮田莉朋。コーチ役を務めるのは片岡龍也だ 2017年のFIA-F4選手権最終大会がツインリンクもてぎで開催され、第13戦は宮田莉朋(FTRSスカラシップF4)がポール・トゥ・ウィン。そして、第14戦では宮田が3位に入り、シリーズ2連覇を達成した。優勝は大湯都史樹(HFDP/SRS/コチラレーシング)が飾っている。
ついに最終決戦を迎えたFIA-F4のチャンピオン候補は3人。ポイントリーダーは笹原右京(HFDP/SRS/コチラレーシング)で、13ポイント差で宮田、47ポイント差で角田裕毅(SRS/コチラレーシング)が追う展開となっていた。
もてぎでのレースウィークは、さかのぼること2カ月半、前戦鈴鹿大会での第12戦を制したことで流れを導いた宮田が練習から好調。専有走行のほとんどをトップで、最速タイムも記していた。
土曜日の早朝に行われた予選でも、宮田の勢いは止まらない。「路面温度が低かったせいか、思ったよりグリップしなくて、びっくりしました」と語るも、ベストタイムもセカンドベストタイムも最速で、チャンピオン候補のライバルに、さっそくプレッシャーをかける。
「とりあえず2戦ともポールが獲れて良かったです。決勝は勝つだけです。不安はないわけじゃないですけど……。(決勝で)予選みたいにグリップしないのか、気温も上がっているから、また練習みたいなコンディションになるか分かりませんし、GTも走った後ですから。でも、精いっぱいやるだけです」と宮田。
一方、第13戦では角田は3番手、そして笹原は4番手。このふたりの前には「今回、特別なにかやったというわけではなく、むしろ前回のレースからまったく走れていなかったんですが、昨年のデータを基にセットして走ったら、すごくうまくいった感じです」という澤田真治(B-MAX RACING F110)がつけていた。
第13戦の決勝では宮田がスタートを決め、澤田を従えて1コーナーへ。そして、その直後には目を疑う光景が。笹原と角田が接触し、ともにコースアウト。ダメージもなく、すぐにコースへと復帰したものの、笹原が7番手、角田は14番手にまで後退してしまう。
そして予選5番手だった大湯都史樹(HFDP/SRS/コチラレーシング)が90度コーナーで、澤田をかわして2番手に浮上。笹原の後退で、一気に楽になった宮田はオープニングの1周だけで後続に1秒近い差をつけ、そのままファステストラップを連発して逃げていく。
唯一食らいついていた大湯もサスペンショントラブルで4周目にリタイアすると、もう宮田にプレッシャーをかけられるものは存在しなくなっていた。
これで2番手に繰り上がったのは、「1周目の混乱は歯を食いしばって避けて、前に出ることができました」という篠原拓朗(MediaDo ADVICS影山F110)だった。
澤田と川合孝汰(DENSOルボーセF4)を背後に従え、繰り広げていたバトルは、宮田が独走となっていただけに、このレースのハイライトにも。しかし、それぞれ隙を見せず、最後まで順位の入れ替えはなく、篠原と澤田がそれぞれ今季初の表彰台を射止めることとなった。
そして、最後は6秒の差をつけ、宮田が今季4勝目をマーク。宮田は「スタートは悪くなかったんですが、S字でミスしていて、そこがいちばんのピンチでしたね。あとはもう……。正直、後ろが意外な展開になっていましたね。流れは来ていると思いますが、手応えはまだ」とレースを振り返る。
「ファステストラップは獲れましたが、もう少し詰められると思うし。最後も勝ちにこだわっていきます。そうすれば、きっと(チャンピオンが)ついてくるはずです」
一方、笹原は5位まで追い上げたものの、これで宮田に2ポイント差ながらランキングで逆転を許し、8位でゴールの角田からは、王座獲得の権利が喪失した。
日曜日の第14戦も前述のとおりポールは宮田が獲得し、そして笹原は澤田、大湯に続く4番手からのスタートとなった。宮田にしてみれば、もう順位は落とせないし、笹原にとっては、順位を上げないことには再逆転はかなわない。
それぞれにプレッシャーのかかるスタートにおいて……。「フォーメーションラップの最終コーナーでバーンアウトしてみた時に、これはもうダメだと。路面温度が低すぎました」とスタートの出遅れを予感していた宮田は、実際その通りの展開になって、澤田と大湯の先行を許してしまったのに対し、笹原のスタートダッシュは決して悪くなかった。
しかし、その直後、「スタート直後に、左リヤのトーがおかしくなっているのが分かりました。どうして、そうなったのかは分かりませんが」と笹原。そのため、コーナーでの踏ん張りが効かず、あっけなく3コーナーで角田に前に出られてしまう。
その後も「まっすぐ走らせるだけでも大変でしたし、ブレーキングでも止まらない」マシンを、笹原は必死になだめすかして、5番手のポジションだけは守り抜いていた。そんな笹原の悲壮な状態を知ってかしらずか、その前では澤田、大湯、宮田、そして角田の順で激しいトップ争いが繰り広げられていた。その状況は、まさに一瞬即発。だが、10周目の90度コーナーでの大湯のチャージをこらえようとして、澤田がブレーキをロックさせてしまう。
なんとかコース上には踏み留まった澤田ながら、その後のコーナー立ち上がりが少しずつ鈍っていたのを、大湯が見逃してくれようはずがなかった。そして11周目の3コーナーで逆転に成功。
「抜けそうで抜けなかったり、(背後に)ピッタリ着くとダウンフォースが抜けちゃったり。そんなことの繰り返しだったんですが、ワンチャンスを逃さずとらえられて、本当に良かったです」と大湯。同じ周の4コーナーでは角田が宮田にも迫るが、勢い余ってダートに足が出て、こちらは逆転を許されず。結局、大湯が逃げ切って今季3勝目をマーク、澤田に続いて3位でフィニッシュした宮田が、シリーズ2連覇を達成した。
「昨日勝てたことで、今日は笹原選手のことだけ意識して走っていました。守りに入っていた部分も正直あって、行きたい気分はありましたが、リタイアしたら元も子もないですから」と宮田。
「2年連続でチャンピオンが獲れて、本当に良かったです。応援してくれた方々や、支えてくれたチームには本当に感謝しています。これからは、僕自身がFIA-F4を戦うドライバーの目標になるような選手になりたいです」
シリーズ2連覇を達成した宮田にとって、次のレースは初挑戦となるマカオGP。この勢いがどう反映されるか、大いに注目されるところだ。
一方、5位でのフィニッシュにより、再逆転はならなかった笹原ながら、「レースに何があるか分からないので、最後まで気持ちを切らさずに走れたんですが、不完全燃焼感はさすがにあります。今年1年間、やってきたことに悔いはありませんが、あまりに悔しいので、来年のことは何も決まっていませんが、出るカテゴリーでは必ずチャンピオンを獲りに行きます」と、早くもリベンジを誓っていた。