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Brian the Sun、『ブライアンフェス』での“素顔” オーラル、感エロ、スペアザと祝った10周年

2017年11月13日 10:52  リアルサウンド

リアルサウンド

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「俺ら誤解されやすいんですけど……なんでひねくれてるかというと、本当のことを知りたいからなんですよ」


 Brian the Sunが10月1日と9日に大阪と東京で開催した『ブライアンフェス』は、結成から10周年を迎えたバンドの歴史と出会ってきた仲間たちを凝縮し、これまであまり見せてこなかった内面すらも曝け出したライブだった。


 大阪公演にはアルカラ、HAPPY、04 Limited Sazabys、東京公演には感覚ピエロ、THE ORAL CIGARETTES、SPECIAL OTHERSが出演するなど、幅広い音楽性と交友関係をラインナップでも提示してみせたBrian the Sun。本稿では、東京公演に焦点を絞って書いてみたい。


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 この日の公演でMCを務めたのは、彼らが2012年のインディーズ時代に出演したラジオ番組『TOKYO REAL-EYES』でDJを担当していた藤田拓巳。彼が司会進行をし、ライブが進行していくのかと思いきや、Brian the Sunのメンバーが早速ステージ上に登場。白山治輝(Ba)も「バンドがMCで先に出るスタイル」と、トリまで待っていられないと言わんばかりの姿が微笑ましかった。


 と、ここで藤田がアンケートを読み上げるコーナーへ。1バンドずつ、Brian the Sunへの思いを事前に答えていたようだ。まず読み上げられたテーマは「彼らとの出会いについて」。「出会ったのが昔すぎて覚えてない。love it in the sky(Brian the Sunの前身バンド)よりかっこいいバンドという印象」、「某レンタルショップで治輝さんと一緒にアルバイトをしていた頃、のれんを潜った先のとあるコーナーで話し込んでたことがある」など、前身バンドの名前や知られざるエピソードまで続々と暴露され、Brian the Sunのメンバーもタジタジの様子だった。


 その後ステージに登場したのは、大阪を拠点に活動している盟友・感覚ピエロ。西尾健太(Dr)と滝口大樹(Ba)によるグルーヴの効いたダンスナンバー「CHALLENGER」から、四つ打ちロックの「Japanese-Pop-Music」、横山直弘(Vo/Gt)の「上も下も右も左も、全員まとめてかかって来いやー!」という挑発とともに披露された「疑問疑答」では、フロア中でモッシュが巻き起こる。


 MCでは、横山が大阪と東京での出演バンドについて触れ、「この並びでなんで俺ら? 付け合わせか? と思ったけど、俺らが一番めちゃくちゃできる立場なんだよね!」と開き直ると、タオルを振り回すロックチューン「A BANANA」、「O・P・P・A・I」と、下ネタ側に振り切ったパフォーマンスを見せた。


 そして、横山が「全員の未来に向かって歌います」と語って演奏されたのは、新曲「ハルカミライ」。秋月琢登(Gt)によるタッピング奏法でのイントロから、ラウドなのにメロディはポップという、彼らのらしさが存分に発揮された1曲だ。終盤はドラマ『ゆとりですがなにか』の主題歌に抜擢された「拝啓、いつかの君へ」、踊れるラウドロック「メリーさん」でステージを後にした。


 続いては、アンケートでBrian the Sunのことを「愛想のいい後輩」としきりに褒めていたSPECIAL OTHERSが登場。芹澤“REMI”優真(Key)と宮原”TOYIN”良太(Dr)によるインプロから、柳下”DAYO”武史(Gt)のアーシーなギターを経て「TWO JET」、又吉”SEGUN”優也(Ba)がアップライトベースに持ち替えての「ORION」、芹澤がボコーダーを使用し、機械的なコーラスと複雑なアンサンブルが同居する「I’LL BE BACK」と立て続けに演奏した。


 MCでは、芹澤が「Brian the Sunのメンバーが手紙を書いてくれたんだけど、『高校生の時に聴いてました』とか、愛があってさ。森(良太)の手紙もかっこいい内容だったんだけど、字が汚かったよね」と愛のあるイジりを展開し、彼らの代表曲「AIMS」でたっぷり観客を踊らせ、フロアの雰囲気をピースフルなものに変えてみせた。


 3バンド目は、アンケートに「好きなところはバンド名、嫌いなところは綴りがたまにわからなくなるところ」と、ユーモアを見せてくれたTHE ORAL CIGARETTES。イントロで山中拓也(Vo/Gt)とあきらかにあきら(Ba)が軽快にボックスステップを踏み、中西雅哉(Dr.)が力強いビートを刻み、山中が「我々がTHE ORAL CIGARETTESだ、かかって来い!」と煽った「CATCH ME」では、1曲目だというのにダイバーが続出。そこから「カンタンナコト」を経て、山中が「Brianじゃ聴けないような曲です」と艶っぽいボーカルが心地良い「マナーモード」、「リコリス」と、新旧楽曲を混ぜながらフルスロットルのパフォーマンスを繰り広げる。


「昔、Brianのこと嫌いやってん。出会ったころは『若手の方で上手い方』みたいなオーラ出てたし(笑)。大体の人間は腹黒いと思うけど、彼らはその極み。せやけど、俺はそれが好き。『不器用やから付き合いきれん』というのは、時がなんとかしてくれます。これからも一緒にあいつらと戦っていきたいし、言葉じゃなくて音楽で存分に楽しんでいきたい」


 そんな山中の独白に会場中が引き込まれると、「DIP-BAP」では山中が「お前らが『間違いねえな』って思ったやつは大切にしろ!  Brian、お前らに歌うんだよ!」とアツいシャウトでファンをさらに熱狂させ、この日一番激しいといえる「狂乱 Hey Kids!!」では、鈴木重伸(Gt)のヘヴィなギターソロも炸裂。最後は「どうしてもこの曲をこれからのTHE ORAL CIGARETTESの糧にしたい」と語り、最新曲「BLACK MEMORY」をパフォーマンス。山中が客席最前列まで移動し、ダイバーを振り切りながら全力で歌う姿は、先日満員の武道館公演を達成し、バンドとしてもさらに上のステージへ辿り着いた風格が備わっていた。


 そしてトリには、いよいよイベントの首謀者・Brian the Sunがステージへ。1曲目「Sister」、「Suitability」にも、どこかこれまでと違った“余裕”が見られた。MCでは森が「コール&レスポンスやります。俺らのライブ来てる人からしたら『頑張ってるなー』って感じやろ(笑)」と茶化しながら、彼らにしては珍しいコール&レスポンスへ。こういうパフォーマンスも前置きがないとできないのもBrian the Sunらしい。


 そんなやり取りから始まった「パワーポップ」と、ライブ定番曲「シュレディンガーの猫」を経て演奏されたのは新曲「フォレルスケット」。キメの多い展開は彼らの持ち味だが、どこかポストロック的なビートとギターのフレージングは、これまでにはない新境地といっていいだろう。


 そんな興奮をクールダウンさせ、優しく包み込むような「Maybe」、爽快なギターロックなのにどこか切なげな「隼」、最新アルバムのタイトル曲「パトスとエートス」と、Brian the Sunの多面性を象徴する楽曲が次々にパフォーマンスされた。


 MCでは、森が「昨日何話そうか考えたんですけど、5時になっても浮かばなくて寝たんです。夜中のテンションやから着地点が『やっぱ愛やな』にしかならなくて」と前置きし、冒頭の言葉を話したのち、「そんな奴が愛しかないっていうんやから核心に近いんやと思います。昔は『ライブ来てくれてありがとう』とかも言いたくなかったし、嫌いなやつもいっぱいおったけど、最近はそんなことなくて。それもまためちゃくちゃ不安で。めんどくさい奴ですね(笑)」と本音を語る。こうした森の姿は時折見ることができるが、この日は節目ということもあってか、より内側を曝け出してくれていたように思える。


「みんなの笑顔を見たくて書いた歌を歌います」


 そう話して歌ったメジャーデビュー曲「HEROES」、ハードな「13月の夜明け」で本編を終えると、アンコールでは森が鍵盤(KAWAI MP7)の前に座り「全員違って全部良かったからこそ、自分らのスタイルが再確認できました」と話したのち、「ピアノで曲を書いたんです。聴いてもらえると嬉しいです」とアニメ『3月のライオン』の第2シリーズエンディングテーマ「カフネ」を披露。彼らのディスコグラフィーでは「アブソリュートゼロ」に近いミドルバラードだが、「Maybe」などをリリースした上で会得した”温かさ”がより際立っているように感じた。


 そしてアンコール2曲目は、森が「バンドってほんま難しい。違う人間とおったら腹立つこともあるけど、違うからいいんやと思いました。生きてると迷うから、帰る場所になればいい。そう思って聴いてください」と語り、未発表の新曲「the Sun」へ。バンド名の一部を取った、“三分の二セルフタイトル”といえるバラードは、メンバー全員でボーカルを担当する、これまでの彼らには無い楽曲だった。


<ずいぶん遠くまで来たんだなあ><生まれ変わってももう一度 バンドをやろうぜ><勘違いの果てにここまでやってきた>


 音楽は言葉よりも雄弁とはよく言ったものだが、ここまで彼らが自分たちへの素直な気持ちを音と歌に乗せられたのは初めて。バンドを長く見ていればいるほど、感動を覚える1曲だ。思えばこの日のライブも、彼らが仲間を集めて、最大限の感謝を表現するという、今までのBrian the Sunにはなかった試みといえる。


 そうして、一歩ずつ、着実に歩みを進めてきたBrian the Sunは、いま大きく変わろうとしている。その瞬間に立ち会えたことを、嬉しく思わずにはいられない一夜だった。(中村拓海)