2017年11月13日 10:23 弁護士ドットコム
「18歳未満と性的関係を持ってしまった」というニュースが後を絶たない。しかも、そうした行為が多くの場合、罰則対象になり得ることを利用して、脅しの手段にする人もいるようだ。
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福岡県で10月16日、女子高校生と性的関係を持たせた上で、30歳の男性会社員から金を脅し取ったとして、当事者の女子高生2人(いずれも17)と無職の男性(21)らが逮捕された。
西日本新聞によると、逮捕された男性は、女子高校生たちと共謀し、性的関係を持たせた上で、「俺の彼女は17歳ぞ」「示談金100万円払え」と恐喝し、現金13万円を脅し取った疑いがあるという。
18歳未満を利用した美人局(つつもたせ)やハニートラップに引っかかった「被害者」は、罪に問われないのだろうか。もし脅迫された場合、どうしたら良いか、高橋辰三弁護士に聞いた。
ーー通常、18歳未満と性的関係を持ったら、どうなる?
18歳未満と性的関係を持った場合、地方公共団体が制定する青少年保護育成条例違反に問われることがあります。
さらに、性的関係を持つにあたって対価の支払いをしていたような場合には、「児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律」(児ポ法)で処罰の対象とされている児童買春(児ポ法第4条)に該当します。
ーー今のところ、「被害男性」が逮捕されたという報道はないようだ。美人局の手段として18歳未満が利用された場合、性的関係を持ってしまった人は処罰されないのだろうか?
性行為にあたり対価の支払いがなかったことを前提にすると、青少年保護育成条例違反の罪が成立するかが問題となります。青少年保護育成条例違反が成立するためには、18歳未満の者との「淫行」が必要になり、婚約中や真剣交際などでなければ、「淫行」に当たると判断されるケースが多いといえます。
ただし、青少年保護育成条例違反の成立には基本的には「故意」が必要なので(過失犯処罰規定を置く自治体があります)、18歳未満であることを知らなかった場合には、故意を欠き、同条例違反の罪は成立しません。
ーー今回のケースでは、被害男性が「18歳未満と知らなかった」可能性もありそうだ。では、「実は18歳未満だった」と脅された場合はどうしたら良いのだろうか?
行為時に18歳未満であることを知らなかったのであれば、同法違反は成立しません。本件のような美人局に遭ってしまったら、警察に被害相談をするべきでしょう。
もっとも、故意が否定されるケースは限定的といえますので、18歳以上であることが明らかでないのであれば、そもそも性的関係を持つことはやめなければなりません。
ーー相手が18歳未満だと知らなかったことを証明するには、どういった証拠が必要になる?
故意の判断要素として、女性の風貌、服装、メール、掲示板等における年齢、学校の種別・学年の表示等が挙げられますが、上記の故意が否定されるのは、学生証や保険証などの身分証明証を見せてもらって確認したが、偽造の身分証を見せられていた場合などに限定されます。
単に女性から18歳以上であると聞いていたというだけでは故意を否定するのは難しいでしょう。
今回の被害男性は、自らの条例違反行為について自首していると考えられることから、逮捕までされず、在宅捜査でいわゆる書類送検という扱いになっている可能性もあります。恐喝の被害者であるという側面もあるので報道されないということもあるのではないでしょうか。
ーー報道からは、今回のケースがどうだったかは定かではないが、「君子危うきに近寄らず」とは言えそうだ。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
高橋 辰三(たかはし・たつぞう)弁護士
東京都世田谷区において、町医者のような法律事務所を目指し2010年にアジアンタム法律事務所を開所し、民事事件、家事事件、刑事事件などを取り扱っている。弁護士会や地域ボランティア団体などでの公益活動に携わりながら、気ままに仕事をしている。
事務所名:アジアンタム法律事務所
事務所URL:http://www.adiantum.jp/