2017年のスーパーGT最終戦、第8戦の決勝レースが11月12日、栃木県のツインリンクもてぎで行われ、スーパーGT300クラスは黒沢治樹/蒲生尚弥組のLEON CVSTOS AMGが優勝。今季2勝目を飾った。また、3位に谷口信輝/片岡龍也組が入り、チームとして3度目となるシリーズチャンピオンを獲得することとなった。
激闘の繰り広げられた2017年シーズンを締めくくるにふさわしい好天に恵まれた最終戦は13時37分に火蓋が切られた。
まず最初にホールショットを奪ったのはポールポジションスタートのグッドスマイル 初音ミク AMG。これに2番手スタートのARTA BMW M6 GT3、VivaC 86 MC、GAINER TANAX AMG GT3、D’station Porscheが続いていく。LEON AMGは6番手にポジションを落としたものの、上位陣から離れずに周回を重ねていく。
上位陣の各車はタイトルがかかっていることもあり、序盤戦は落ち着いた展開。しかし、そのなかでも初音ミクAMGのラップタイムは安定して速く、8周目には2番手ARTA BMWに5秒の差をつけることとなった。
早くもひとり旅の様相を見せる首位争いとは裏腹に、4番手争いが激化。GT500クラスに周回遅れにされる際には若干陣形がバラけるものの、ふたたびGAINER AMGとD’station Porscheが急接近することに。
オーバーテイクの機会をうかがうD’station Porscheは、12周目のV字コーナーでアタック。アウトから並んでコーナーに突入するものの、イン側のGAINER AMGがタッチしながらポジションを死守。その後もテール・トゥ・ノーズの戦いが続いた。
15周目を迎えると、先頭の初音ミクAMGのピットが動きを見せ、翌16周目にピットインし、給油とドライバー交代、そしてタイヤ4輪交換を実施する。その動きに呼応するかのようにD’station Porscheもピットイン。
41秒4のタイムで作業を終えたグッドスマイル 初音ミク AMGだが、気がつけば直後にD’station Porscheの姿が。D’station Porscheはリヤタイヤ2本交換作戦でタイムを詰めることに成功していた。タイヤが温まっていることもあり、コースイン直後に初音ミク AMGをオーバーテイクする。
翌17周目、VivaC 86がピットイン。タイヤ無交換作戦を敢行し、D’station Porscheと初音ミクAMGの前に出ることに成功。事実上のトップ争いがここから白熱することとなった。
VivaC 86とD’station Porsche、初音ミク AMGは超接近戦となり、18周目、D’station Porscheが90度コーナーでVivaC 86をオーバーテイク。このまま勢いに乗りポジション争いを有利に進めるかと思われたが、翌19周目にD’station Porscheはまさかのスローダウン。タイヤトラブルが起きたようで、緊急ピットインを行いタイヤを交換して、ふたたびコースに復帰したものの、上位争いからは大きく遅れてしまった。
これにより、タイヤ2本交換のVivaC 86と4輪すべてのタイヤを交換した初音ミク AMGの一騎打ちになると思われたこの争いに、若干遅れてピットインしたLEON AMGが加わることとなった。LEON AMGは、フロント2本のタイヤ交換作戦を選択。ピットのロスタイムを縮めていたのだ。
LEON AMGがピットアウトすると、VivaC 86と初音ミク AMGの間に入り込むことに。ふたたび3台によって事実上の上位争いが繰り広げられた。
そんななか、異なった戦略で虎視眈々と事実上のトップを走行していたマシンが存在していた。序盤から2番手を走行していたARTA BMWだ。ライバルマシンがピットインを行なったことで単独走行できるようになると、安定したラップタイムで周回。ライバルマシンがバトルを繰り広げている最中に、じわじわとタイム差を広げることに成功していた。
そして31周目、満を持してARTA M6がピットイン。単独走行でタイムを稼ぎつつ、さらに奥の手としてタイヤ無交換作戦を行いタイムロスを最小限に留める。ピットアウトすると、VivaC 86やLEON AMGに対し、メインストレート一本分近いマージンを築いていた。
GT300クラスの全車がピットインを終えると、首位は単独走行のARTA BMW。VivaC 86とLEON AMG、初音ミク AMGの3台が1秒以内でのバトルを繰り広げながら続き、さらに遅れてGULF NAC PORSCHE 911というトップ5となったが、事実上の優勝争いは上位4台に絞られることとなった。
ピット戦略によりLEON AMGと初音ミク AMGの前で走行するVivaC 86だが、ラップタイムが上がらず、後ろの2台にピタリと追走される苦しい展開。
そして32周目、虎視眈々と2番手の座を狙っていたLEON AMGが、第3コーナーでVivaC 86をオーバーテイク。LEON AMGには余裕があったようで、瞬く間に後続の2台を引き離すことに成功する。
その後もVivaC 86のラップタイムは上がらないものの、タイトルを争う初音ミク AMGも無理に仕掛けるわけにはいかず、2台による3番手争いはこう着状態に。GULF PORSCHEも追いつき、ふたたび3台によるバトルが始まった。
一方、盤石と思われていたARTA BMWの首位走行に、じわじわと近寄るマシンが。同じくブリヂストンタイヤを履きつつも、フロントタイヤを交換したLEON AMGが少しずつその差を縮めてきていた。
このままの順位であればチャンピオンは初音ミク AMGのものとなるため、タイトル獲得の可能性を高めるためにLEON AMGはさらにプッシュ。これに呼応するかのように、初音ミク AMGもVivaC 86を激しく追いかけることとなる。
そして39周目、初音ミク AMGは3番手におどり出ることに成功。タイトル争いをより有利な展開へと持ち込むこととなった。しかし、LEON AMGも最後まで諦めない。
残り周回数が少なくなると、ARTA BMWはタイヤがタレたか、グリップ不足に苦しんでいるようでタイムダウン。一方のLEON AMGの勢いは衰えず、2台は急接近。そしてついにはテール・トゥ・ノーズの展開になる。
そして48周目の1コーナーでLEON AMGがARTA BMWをオーバーテイクし、ついにトップに浮上。チャンピオン獲得へ向けて、できうる限りのポジションを奪取し、チェッカーフラッグを目指した。
そのままLEON AMGがトップでチェッカー。2位にARTA BMWが続き、初音ミク AMGが3位でゴール。3年ぶり3回目のタイトルを獲得することとなった。
4位はGULF PORSCHE、5位VivaC 86と続き、こちらも最終戦までタイトル獲得の可能性を残していたJMS P.MU LMcorsa RC F GT3が6位でゴールした。
グッドスマイル 初音ミク AMGはトップでチェッカーを受けた際、片岡はガッツポーツ。満面の笑顔で片山右京監督と喜びを分かち合った。パルクフェルメに戻ってきた谷口も片岡と強く抱き合ったが、その目には涙が浮かんでいた。
盤石に見えたレース展開だったが、タイヤも含めかなりギリギリ攻めた戦略だったようで、ふたりの顔に、ようやく安堵の表情が見られることとなった。