2017年シーズン最終戦となるスーパーGT第8戦が11月12日、ツインリンクもてぎで行われ、GT500は数字上の候補5台、実質予選トップ3台によるタイトル争いの結果、ポールポジションからスタートしたMOTUL AUTECH GT-Rが最終戦で今季初優勝。2番手に入ったKeePer TOM'S LC500がチャンピオンに輝いた。
快晴の下、ツインリンクもてぎには多くのファンが来場。日曜朝はサーキット周辺は多くのクルマが列を並べ、通常の倍近い時間が必要なほど、多くの観客がツインリンクもてぎを訪れた。自衛隊松島基地のF-2戦闘機の歓迎フライトやDTMマシン3台のデモラン、そしてDTM代表でもあるゲルハルト・ベルガーの来場など、盛りだくさんのスケジュールを終え、いよいよレース進行が始まる。
GT500クラスの見どころは、もちろん、チャンピオン争い。国内レースをよく知るものならば、ツインリンクもてぎでのコンマ9秒差がどれほど大きな差なのかをご存知のはず。ストップ&ゴーのレイアウトのもてぎは、どのカテゴリーでも僅差になる。昨年の最終戦のGT500の予選に当てはめるとトップからコンマ9秒差は7番手。今回、2番手にコンマ9秒でポールを獲得したMOTUL GT-Rの一発の速さが、どれほど強烈なインパクトをライバル陣営に与えたかが伺い知れる。
ポールからの逃げを狙うMOTUL GT-R、追うWAKO'S 4CR LC500、そしてランキングトップのKeePerというトップ3のグリッド順。タイトル上位3台が先頭になっての最終決戦が、ついにグリーンシグナルを迎えた。
白バイ、パトカー、そしてDTMの先導によるパレードラン、フォーメーションラップを終えてスタートを迎えるその瞬間、まさかのアクシデントが発生する。
最終コーナーのビクトリーコーナーでローリングスタートのタイミングを伺いつつ、ブレーキングでタイヤを暖めていたトップのMOTUL GT-Rと2番手WAKO'Sが接触。MOTUL GT-Rの左リヤとWAKO'Sの右フロントが接触してパーツが大きく破損してしまう。それでも走行には大きな支障はないようで、そのまま53周のレースがスタート。
だが、やはり右フロントを破損した2番手WAKO'Sはペースが上がらず、4周目には3番手KeePerに1コーナーでかわされてしまう。その後も5周目には36号車のau TOM'S LC500にS字でオーバーテイクを許し、6周目にはS Road CRAFTSPORTS GT-Rとサイド・バイ・サイドに何度もなりながらバトルを繰り返すが、最終的にS Roadが前に。
そしてWAKO'Sは5コーナーの進入でフォーラムエンジニアリング ADVAN GT-Rと接触し、スピン。フォーラムエンジニアリングもサンドトラップに飛び出し、2台ともに最後方に順位を下げてしまう。WAKO'Sはこの序盤のアクシデントがらみで実質、タイトルの権利を失い、後にフォーラムエンジニアリングはこの接触の件でドライブスルーペナルティを受ける。
そして8周目にはauが緊急ピットイン。どうやら左リヤにトラブルを抱えてしまったようで、そのままガレージへ。タイトル候補でもあったauが戦線を離脱して、コース上のタイトル候補は4番手に上がったZENT CERUMO LC500を含めてMOTUL GT-R、KeePerの3台に絞られる。
トップのMOTUL GT-Rは順調に周回を重ね、2番手KeePerとは4秒程度のギャップで周回。3番手以下はS Road、ZENT、RAYBRIG NSX-GT、カルソニック IMPUL GT-R、KEIHIN NSX-GT、ARTA NSXの順に。
15周目を過ぎてトップMOTUL GT-Rと2番手KeePerのギャップは5秒弱に。そして20周目からはルーティンのピットイン合戦に。まずは4番手走行のZENTが立川祐路から石浦宏明へ、そして7番手KEIHINが小暮卓史から塚越広大に交代。
22周目を迎えて、MOTUL GT-RとKeePerの差は3.7秒に。そこで2番手のKeePerが先にピットイン。ニック・キャシディから平川亮に乗り替わる。
23周目にはRAYBRIG、DENSO KOBELCO SARD LC500がピットイン。翌24周目にはカルソニック、WAKO'Sがピットイン。
その後、25周目にトップのMOTUL GT-Rがピットイン。ステアリングをロニー・クインタレッリから松田次生に替わってトップでコースに戻る。2番手のKeePer平川はちょうどストレートに差し掛かったところで、2台の差はちょうどストレート1本分。MOTUL GT-Rはトップを堅守する。
27周目にはS Roadがピットインし、7番手でコースイン。この時点でEpson Modulo NSX-GTだけがルーティンのピットインをしておらず、実質の順位はトップからMOTUL GT-R、KeePer、ZENT、RAYBRIG、KEIHINのトップ5に。MOTUL GT-RとKeePerのギャップは約9秒。
34周目にはMOTUL GT-RとKeePerのギャップは12秒に拡大。KeePerは2位でもタイトルが決定し、3番手に同じレクサスのZENTが控えているため順位は安泰なため、ペースをコントロールか。
38周目には4番手RAYBRIGと5番手KEIHINがバトルを繰り返し、KEIHINが前に。40周目には10番手Epsonと11番手WedsSport ADVAN LC500が接触して、WedsSportは右フロントを大きく破損してしまう。
43周目、残り10周となってもMOTUL GT-RとKeePerのギャップは12秒。だがその後、序々に2台の差は縮まっていく。残り2周となったS字では10番手WAKO'Sのボンネットが吹き飛び、エンジンルームが丸見えの状態で走行。オレンジディスクが提示され、レースのスタートからフィニッシュまでWAKO'Sはトラブル、アクシデントの多い最終戦となってしまった。
終盤にアクシデントが起こったものの、MOTUL GT-Rは終始安定したペースで最後はKeePerに6秒差でトップチェッカー。MOTUL GT-Rはニッサン陣営として今シーズン初、ニスモとしても2016年の第2戦富士以来の優勝を果たした。そして2位を守り抜いたKeePerがドライバーズタイトルを獲得。平川亮、ニック・キャシディにとってはスーパーGT初タイトルで、トムスにとっては2009年の脇阪寿一/アンドレ・ロッテラー組以来となる、8年ぶりの栄冠となった。
今シーズンから施行された2017年「クラス1」新規定に沿って、勢力図がリセットされた2017年のGT500クラス。開幕から序盤はレクサスLC500が表彰台を独占するなど、レクサス一強の印象が強かったシーズンだが、最終戦のリザルトだけを見ればトップ6はMOTUL GT-R、KeePer、ZENT、KEIHIN、RAYBRIG、S Roadと、3メーカーが2台づつ分け合う展開になった。
KeePerの平川、キャシディが初めてのタイトルを獲得し、フレッシュな印象となった2017年のスーパーGT500クラス。今シーズンはDTMとのはじめてのコース上でのデモランなど、次代に向けての大きな一歩を踏み出したような転換期となる1年となった。