「雨が降ったら9ポイント差は無いに等しい。でもドライだったら、9ポイント差はすごく大きい」
9ポイントという、大きな差をつけチャンピオン争いをリードしてスーパーGT第8戦ツインリンクもてぎに臨んだグッドスマイル 初音ミク AMGの谷口信輝に、最終戦前の展望を聞いたときに返ってきたのが、この言葉だ。今季ウエットで抜群のパフォーマンスをみせるブリヂストンタイヤ装着車が続くタイトル争いのなかで、谷口はもてぎ戦での天候を不安視していた。
幸い、この日のもてぎは早朝こそ雲があったものの、その後はスッキリと晴れ、谷口の心配は杞憂に終わった。谷口は「ドライだったら、9ポイント差をひっくり返されない自信はある。ライバルの2台とも近い位置にはいられると思うしね」とも語っていたが、果たして今季「どこへ行っても速い」グッドスマイル 初音ミク AMGが、そのパフォーマンスを存分に披露した予選となった。
結果的に、意外にも初のポールポジションとなったグッドスマイル 初音ミク AMGの片岡龍也が記録したタイムは1分46秒076。2番手につけた高木真一がマークした46秒300も抜群のタイムだったし、3番手のLEON CVSTOS AMG(蒲生尚弥)、4番手のVivaC 86 MC(松井孝允)のタイムもいずれもレコード。どれも素晴らしいタイムだったが、これを上回ったグッドスマイル 初音ミク AMGのタイムは、他のGT3チームのライバルからも「心折られました(苦笑)」という声も聞こえた。
こうしてポールのグッドスマイル 初音ミク AMGは、1ポイントも加え、タイトル争いを有利な展開に持ち込んでいる。さらに、9ポイント差のマージンがある。これをひっくり返すのは、並大抵のことではない。ただ、ライバルたちはそれぞれに“策”はあるようだ。
「スピードでは正直、第7戦タイのような速さがないと思うんです。タイでは4号車に負けてしまうので、チームとしては逆の作戦を採ろうと話をしました。今のところ、想定外のタイムをライバル勢には出されてはいますが、作戦がうまくはまればいい位置にはいます。始まってみてどうなるかですね」というのは、ランキング2位につけるJMS P.MU LMcorsa RC F GT3の中山雄一だ。
また、ランキング3位につけるLEON CVSTOS AMGの蒲生は「僕たちが望んでいた予選順位ではないです。4号車は速かったですね」というものの、「僕たちは決勝で強いであろうタイヤを履いています。それでポールが獲れれば良かったですが、決勝は期待しています」という。
それぞれに“策”がありそうな上位陣。そして、タイトル争いが絡んでいないライバルたちのなかでも、タイヤ無交換作戦や二輪交換なども非常に多そうな予感だ。決勝ペースを見据えてタイヤ選択をしているのは、タイトル争いのチームだけではない。
グッドスマイル 初音ミク AMGが予選のままの速さで決勝も走りきれば、彼らを止めることは容易ではない。ただ、それで終わらないのがスーパーGTの怖さだ。もちろん谷口信輝も片岡龍也も、それを誰よりも知るドライバーたちなのだが。
「チャンピオンになれるかどうかは、僕たちが(みなさん報道陣に)聞きたいくらいですね。でも、獲るために頑張ってきましたし、獲るためにここに来ているのですから、あまり弱気にはならず、『獲る』という強い気持ちでいこうと思います」と谷口は言う。
ポールポジション獲得により、ランキング2位であるJMS P.MU LMcorsa RC F GT3のふたりとグッドスマイル 初音ミク AMGのふたりの差は、10ポイントまで広がった。10点はひっくり返るのか、それとも……!? まだ勝負は、決まってない。