大手牛丼チェーン「すき家」や定食チェーン店「なか卯」などを運営するゼンショーホールディングスは11月8日、複数の業態で値上げを検討していると明らかにした。年度内の実施を目標にしており、対象メニューや値上げ幅は今後決定する。
背景には、原材料費の高騰と人件費、特にアルバイト単価の上昇が大きいという。
都内では時給1100円超えは当たり前、深夜は1400円にも
東京都の最低賃金は、2004年から毎年上がり続けている。2015年には907円と初の900円台を記録し、今年10月には更に、958円にまで改定された。
すき家の新橋三丁目店を例に挙げると、通常の時給が1120円からで、深夜は1400円とある。同じ新橋駅周辺にある他の牛丼チェーン店は、松屋が「1100円~」、吉野家が「1200円~」と、どこも1100円以上だ。高時給は働く側にはありがたいが、経営側にとってはコストが嵩んでしまう。
ゼンショーホールディングスの広報担当者によると、これまでも店舗オペレーションやメニューの改善などで人件費高騰に対応してきたというが、原材料価格の高騰も相まって、価格に転嫁せざるを得ない状況だという。
一部報道では値上げの検討理由が「人手不足」とも言われたが、同社の広報担当はこれを否定した。「確かに全ての地域で人材が潤沢なわけではないが、それでも毎月数千人のアルバイトを雇用しており、そこまで困ってはいない」と語る。
値上げする商品は今後、各社の商品開発部門と話し合って決める予定だが、現時点で「すき家の牛丼の並盛を350円のまま据え置く」ことだけは決定しているとのことだった。
松屋も「現時点での値上げはないが、3年後5年後は保証できない」
外食業界団体の関係者はゼンショーホールディングスの発表を、業界の置かれている状況を踏まえてこう語る。
「同社の言う『原材料費の高騰』は、今年8月に牛肉のセーフガードが発動し、関税が上がった影響も含まれるでしょう。『アルバイト単価の高騰』は、最低賃金が上がり続け、経常利益を圧迫しているのは業界としても感じています。現段階でも、徐々に価格への転嫁が起きていますが、今後この傾向は続いていくと見られます」
日本フードサービス協会会長は9月、メディアとの懇談会の中で「数年前と比べ、消費者も値上げに寛容になっている印象を受ける」と述べていたという。
「インフレの中、外食産業だけが価格を維持するわけではないと、消費者も分かっているのではないか、という見方が含まれていたのだと思います」(前出の関係者)
なお、同じ牛丼チェーン店「松屋」を運営する松屋ホールディングスの広報担当者は、「現時点で値上げの予定は無いが、「3年後や5年後に同じ価格で提供できるかは保証できない」とのことだった。