2017年11月09日 17:43 弁護士ドットコム
11月7日夜に東京ドームで開かれたアイドルグループ「乃木坂46」のライブで、4本のワイヤで吊るされていたカメラ1台(長さ1.5メートル、重さ40キロ)が高さ6メートルから観客席に落下して、10代の男性3人が打撲などの軽傷を負ったと報じられている。ワイヤの1本が切れたという。
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日刊スポーツによると、ライブが始まったのは午後6時で、カメラは午後8時ごろに落下。ライブはそのまま続いた。
乃木坂46の運営は11月8日、コメントを発表。「事故にあわれた方には、心よりお詫び申し上げます」「これまで以上に安全には十分配慮し、より一層の安全管理を行ってまいります」として、同様の撮影機材は8日のライブでは使わないことを発表した。
警察は業務上過失傷害の疑いがあるとみて調べているそうだが、このような事故でけが人が発生した場合、ライブの運営サイドは、刑事・民事の両面でどのような法的責任を負う可能性があるのか。濵門俊也弁護士に聞いた。
「事実関係の詳細がハッキリしない点もありますが、ライブの途中、ワイヤーで繋がり空中を移動する巨大カメラが落下し、観客席を直撃したようです。不幸中の幸いといいますか、被害者の方々の命にかかわるような状況にはならなかったようですが、落ちどころが悪ければ、冗談抜きで来場者の方々の生命が危険にさらされていた可能性が十分にあります」
どのような法的問題に発展する可能性があるのか。
「人の生命・身体に対する危険を防止することを義務内容とする業務上必要な注意を怠り、人を傷つけてしまった巨大カメラを設置した業者やライブの運営者(以下「運営サイド」といいます)に対しては、業務上過失傷害罪の刑事責任を追及される可能性があります」
民事上の責任についてはどうなのか。
「ライブ会場は、年齢、性別等が異なる不特定多数の来場者に主催者側の用意した場所を提供し、その場所で来場者に演者の表現・パフォーマンスを披露することによって利益を上げることを目的としているので、運営サイドには、不特定多数の人を呼び寄せて社会的接触に入った当事者間の信義則上の義務として、不特定多数の人の通常考えられ得る行動等を前提として、その安全を図る義務(このような義務を「安全配慮義務」といいます)があります。
運営サイドとしては、巨大カメラ設置に対する安全対策や、場合によっては、イベント中止などの措置が求められます。こうした来場者に対する『安全配慮義務』に反してライブイベントを強行し、被害が発生した場合は、損害賠償義務を負う可能性があります。
今回は、ライブ会場内という明らかに運営サイドの管理権の及ぶ範囲内での事故であるところ、巨大カメラの設置に何かしらの人為的な不備があったことが明らかとなれば、カメラの落下について義務違反が認められます。よって、怪我をされた来場者の方々(被害者)に対し損害賠償義務を負う可能性はあります」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
濵門 俊也(はまかど・としや)弁護士
当職は、当たり前のことを当たり前のように処理できる基本に忠実な力、すなわち「基本力(きほんちから)」こそ、法曹に求められる最も重要な力だと考えている。依頼者の「義」にお応えしたい。
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