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『奥様は、取り扱い注意』第6話の鍵は“約束”? 西島秀俊演じる夫が語った男女の違い

2017年11月09日 16:32  リアルサウンド

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 「一生忘れられない経験にしてあげる」。11月8日に放送された『奥様は、取り扱い注意』(日本テレビ系)のエピソード06「フラワーアレンジメント教室」。物語は、伊佐山菜美(綾瀬はるか)が、フラワーアレンジメント教室で知り合った主婦・冴月(酒井美紀)に、町の広報誌の取材を申し込まれることから始まる。取材当日、菜美が約束の時間通りに冴月の家を訪れると、そこには冴月の友達・靖子(芦名星)と千尋(原田佳奈)の姿が。帰宅が遅れるから先に家に入っていてという連絡を受けたと話す二人に言われるまま、菜美は冴月の家に足を踏み入れる。そして、リビングで冴月の夫・達郎の死体を“偶然”にも発見してしまう。


参考:西島秀俊演じる夫は完璧な良い夫? 『奥様は、取り扱い注意』それぞれの夫婦の形


 菜美はアリバイ作りに利用されたと直感し、達郎を計画的に殺害したのは冴月、靖子、千尋の三人で、直接手を加えたのは靖子と千尋の二人だと気づく。世間では殺害の動機が、強盗や痴情のもつれと推測されていたが、それらの理由に違和感を覚える菜美。考えても納得する答えが浮かばない菜美は、彼女ら三人に証拠を突きつけ、「殺したのには深い理由があったんでしょ?」と直接尋ねた。そして、冴月の夫・達郎が15年前に靖子と千尋をレイプしていた事実を知る。さらに達郎は、彼女たちの顔すらも覚えていなかった。冴月は自身と夫しか知らないはずのことを二人が知っていたことで、自分の夫が異常で残酷な犯罪者だと確信したという。「私は妻である前に女だった。だから、女の痛みを見過ごすことはできなかった」と告白し、「夫は私を初めて抱いた時こう言ったの。“一生忘れられない経験にしてあげる”って。それは私と夫だけの言葉だったはずなのに……」と呟き、涙を流した。


 実に皮肉である。“一生忘れられない経験にしてあげる”という、冴月にとっては幸せを象徴するかのような言葉と美しい思い出は、靖子と千尋にとっては呪縛そのもの。忘れたくても忘れられない、恐怖と屈辱で吐きそうになるほどの“一生忘れられない経験”になってしまった。夫の過去を知り、幸せだった日常が完全に砕け散ってしまった冴月は、同時に私と夫しか知らないはずの二人だけの言葉が、私以外の複数人の女性にもこびりついていることを知る。そして、達郎の過去と今回の事件を通して冴月は、夫に初めて抱かれた日の思い出が、ある意味で“一生忘れられない経験”になったのではないだろうか。そういう意味では達郎の約束は守られたことになる。


 エピソード06「フラワーアレンジメント教室」は、この“約束を守る”が鍵になっていたように思う。そもそも、菜美が冴月との“19時に家に行く”という約束を守らなければ、彼女らのアリバイは成立していない。そして、菜美が事件に巻き込まれることもなかった。彼女たちの計画は、菜美が“19時”という時間よりも早く来すぎても遅く来すぎても失敗していた。冴月、靖子、千尋の三人全員が達郎を殺すという約束を守ってしまったことで、今回の事件が発生したのである。さらに、菜美が彼女ら三人に誓った「私は告発しない」という約束も、その代わりに出した条件“自首をするか、この町から出て行くか”という約束もしっかりと守られている。


 “約束を守る”という花言葉を持つのは、白いバラだ。そう、菜美がリビングのテーブルに一輪だけ生けた花が白いバラであった。そして、折れた白いバラには「純潔を失い死を望む」という意味がある。達郎によって純潔を失った彼女らは、“あいつを殺す”という、一つのことに取り憑かれてしまった。ただ、死を望み続けていたからこそ罪悪感や後悔ははない。


 余談だが、「男として生まれて、悲しいと思ったことはある?」と菜美に聞かれた夫・勇輝(西島秀俊)は、「男は法律をつくるために生まれ、女は自然を保持するために生まれる。何かの本にそう書いてあった。男は多分本当の悲しみを知らない生き物なんだ」と語っていた。この言葉はおそらく、フランスの童話作家・セギュール夫人の「男は法律をつくり、女は風俗をつくる」というものから来ているのだろう。この“風俗”は、ある時代やある社会における、生活上の習わしやしきたりのこと。つまり、男は社会をつくり、女は生活をつくる。もしかしたら、男と女は同じ人間というだけで全く別の生き物なのかもしれない。きっと達郎は自分が殺されるほど、彼女たち被害者が痛みを覚えていたなんて思ってもいなかっただろう。そして、加害者と被害者の違いもまた大きい。した方は忘れてしまうがされた方はずっと覚えている。


 達郎を殺した彼女たち加害者もまた、いつしか自分たちが犯した罪を忘れてしまうのかもしれない。だがしかし、自分たちの悲しみだけは“一生忘れられない”に違いない。(文=戸塚安友奈)