ハースF1チームのチーフエンジニアとして今年で2年目を迎える小松礼雄氏。創設2年目の新興チームであるハースはどのようにF1を戦うのか。現場の現役エンジニアが語る、シーズン終盤のリアルF1と舞台裏──F1速報サイトでしか読めない、完全オリジナルコラムの第15回目をお届けします。
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■予選の劣勢から“最良の結果”を手に入れたメキシコGP
4冠王者ハミルトンのすごさが際立つ高速シケイン
アメリカ、メキシコGPの2連戦は、事前の予想とはちょっと違う結果に終わりました。まず、アメリカGPはコース特性上、鈴鹿と同じくタイヤに熱を入れられるサーキットなので、ある程度は戦えると考えていたのですが、実際には高速、低速ともにクルマが安定せず、速さがありませんでした。
2連戦を終えてメキシコから帰ってきたばかりなので、まだ正確な原因は突き止められていませんが、基本的にダウンフォース不足だったことはたしかです。特にセクター3の左、右、左と曲がっていく低速コーナーでの安定性が悪かった上、アンダーステアにも苦しめられました。
また、アメリカGPのオースティンは路面の凸凹をフラットするためにアスファルトが何箇所か削られているのですが、その結果、ターン18のレーシングラインやターン19のブレーキングゾーンが鏡みたいにツルツルになっていてグリップしませんでした。それもマシンの不安定さに拍車をかけていたと推測しています。
ケビン(マグヌッセン)は予選Q1でコースオフした際にマシンにダメージを負ってしまい、フロント&リヤのグリップ不足で最下位。満足に運転できるマシン状態ではありませんでした。決勝に向けてマシンを修復&空力やブレーキバランスなどを見直した結果、ある程度のパフォーマンスを発揮できるところまで戻りましたが、いかんせん予選順位が悪すぎました。
一方のロマン(グロージャン)は予選14番手スタートでレース前半までは良かったのですが、途中から燃料をセーブして戦わないといけなくなり、13位に終わりました。反省点としては燃料をセーブするためのリフト&コースト(直線の終わりで何十メートルかアクセルを戻すこと)でフロントタイヤの温度が下がり、アンダーステアが酷くなってしまったことです。
その前まではまあまあのラップタイムだったのですが、一旦タイヤ温度を失ってフロントのグリップが落ちてしまうと、悪循環になってしまうんです。アンダーステアが酷くなってドライバーはさらにステアリングを切り込む、するとタイヤはもっと滑って磨耗が増し、さらに温度が下がってしまいます。そのような悪循環で、レースが終わった時には左フロントが部分的に完磨耗していました。
続くメキシコGPは標高が高いためダウンフォースがあまり効かないので、うちのように絶対的なダウンフォース量が不足しているチームにはなかなか厳しいのは予想していました。また同じ理由でブレーキやクルマ全般のクーリングもとても厳しいため、その対策でさらにダウンフォースが削られます。
それでもまさか予選で最後尾になるとは想像していませんでした……。状況はどのチームも同じなので言い訳にはなりません。ここでの最悪な予選結果をしっかりと受け止めて、この先、2度とこの様なことにならないよう対策をしなければなりません。
(小松礼雄)
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■それでもやはり現役ナンバー1は・・・?