都会の生活に疲れ、農村での穏やかな暮らしに憧れる人も多い。しかし地方には、都会とはまた違った”住みにくさ”があるのかもしれない。大分県弁護士会は11月6日、14世帯からなる県北部の集落に対し、Uターンした男性を「村八分」にするのをやめるよう是正勧告を出したという。
男性は、2009年に関西からUターンしてきた。「村八分」のきっかけは、農業に関する国の補助金だったという。担当の松尾康利弁護士は、
「男性も耕作地を持っていたので、グループで受給している補助金を自分も分配して貰えるのではないかと思い、仕組みについて調べ始めました。その途中の2013年4月に、寄り合いで男性を自治会から排除することが決まったんです」
と話す。
「水路掃除や五穀豊穣の祭りに参加できない状態」
補助金は、グループで受給するものであり、必ずしもグループ内で均等に配分しなければならないわけではない。例えば、Aさんの耕地が平地で、Bさんの耕地が山に近く、機械により多くの費用が掛かる場合、Bさんに多く配分してもよい。そのため、男性が補助金を貰えていなかったことが、すぐに問題となるわけではない。
そもそも男性は補助金の分配について疑問を呈したわけではないという。あくまでも補助金がどうなっているのか調べるために問い合わせをしていたところ、自治会から排除されたのだ。
松尾弁護士は、「村八分」の現状について、
「自治会から排除された結果、男性は、水路掃除やお祭りの通達をしてもらえていません。水は共同で管理しているため、掃除に参加できないと水が使えない可能性もあります。また五穀豊穣の祭りや収穫を祝う祭りは、農業を行う人にとってはとても大切な行事です。自然を相手にしている以上、どんなことがあるかわからず、できることは全てやりたいという気持ちがあるからです」
と語った。
最初は「住民票を移していないため、自治会には入れない」だったけど……
男性は2013年9月、弁護士会の人権擁護委員会に申し立てを行った。同委員会が集落に問い合わせたところ、一度目は「住民票を移していないため、自治会には入れない」という回答があった。そこで男性が住民票を移したところ、今度は「全員の賛同が得られないと自治会に入れない」と回答があったという。
こうした「村八分」は2000年代以降も時折問題となってきた。2004年には、全36戸からなる新潟県関川村で11戸の住民が、イワナのつかみ取り大会への不参加を表明。「準備と後片づけでお盆をゆっくり過ごせない」「大会の会計に不正がある」というのが理由だった。
すると村の有力者は、不参加者に対してゴミ収集箱の使用や山での山菜採りなどを禁じたという。この騒動は、裁判にまでもつれ込んでいる。