凶悪事件の原因としてアニメを槍玉に挙げる人が後を絶たない。自民党で政調会長代理を務める山本一太参院議員(59)は、11月5日放送の「新報道2001」(フジテレビ)に出演し、座間市の遺体遺棄事件は「猟奇的なアニメの影響を受けている」と発言した。ネットでは、「今回は全く別問題」と批判的な声が相次いでいる。
「ゲーム感覚でやっているんじゃないか。妄想と現実の区別がつかなくなっている」
同番組では、白石隆浩容疑者(27)が送検される時に顔を隠していたことや被害者9人の切断された頭部が容疑者の自宅に置かれていたことから、容疑者は顔にコンプレックスがあるのではないかと推測。話を振られたスタジオの山本氏は、
「一言で言うと、ゲーム感覚でやっているんじゃないか。妄想の世界と現実の世界の区別がつかなくなっている。最近はこうした猟奇的なストーリーのアニメもありますから、そうしたものに影響を受けている感じがしますよね」
と語った。アニメや漫画が犯罪の原因になっている、という中高年が多いが、今回もそうした議論が繰り返された形だ。山本氏はさらに、
「ネットで規制するというのは大変ですが、こうした人たちの行動を監視して、犯罪を未然に防ぐ方法があるのか真剣に考えないといけないと思います」
とも話した。
この発言に対して、ネットでは、「さすがに今回は全く別問題でしょうに…」と呆れる人が続出。山本氏が具体的なアニメの名前を挙げていなかったことから、
「猟奇的なストーリーのアニメって具体的に上げてみろよなぁ?」
「アニメ名と問題のシーン、そしてそれが本当に原因となったのかを明確に証明してほしいね。それが出来なかったら単なる侮辱発言だよ」
と憤慨する人も多かった。
中には、「『アニメマンガゲームのせいだ』ってことにすれば、『政治のせい』『教育のせい』『社会のせい』ってことにならない(と思ってる)から楽、なんだろうなあ」と発言の背景を分析する人も。確かに、アニメのせいにしておけば、凄惨な事件に結び付いた様々な社会的要因と向き合う必要がなくなる。
「あの部屋からそういうの出てきたの?」という声もあった。現在のところ白石隆浩容疑者の自宅からアニメや漫画、ゲームが押収されたという報道はない。
アニメ市場が拡大を続ける一方で殺人事件の被害者数は減少傾向
年々、アニメを楽しむ人は増えているが、それに伴って犯罪が増えているという事実はない。「アニメ産業レポート2016」によると、1970年には38本だったTVアニメのタイトル数は、2015年には341本となっている。アニメ市場の規模も、2009年から拡大を続けている。
一方、殺人事件の被害者数は1960年代以降、減少傾向にある。昨年2016年には、戦後初めて年間300人を下回っている。容疑者の自宅から「猟奇的なアニメ」が見つかったというならまだしも、やはりアニメと犯罪を短絡的に結び付けるのには無理がありそうだ。