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稲垣吾郎、草なぎ剛、香取慎吾による“革命の3日間” 『72時間ホンネテレビ』を振り返る

2017年11月06日 07:02  リアルサウンド

リアルサウンド

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 11月2日夜9時からスタートした、稲垣吾郎、草なぎ剛、香取慎吾によるインターネットテレビ生放送特番『72時間ホンネテレビ』(AmebaTV)が11月5日夜9時に幕を閉じた。 ジャニーズ事務所から独立後、初めて3人が共演し、彼らのやってみたいことを踏まえて、72時間という規格外の生放送に挑んだ同番組。稲垣はブロガーに、草なぎはユーチューバーに、香取はインスタグラマーに……と、それぞれSNSをスタートさせ、Twitterでのトレンドワード世界一を目指すなどチャレンジングな企画がギュッと詰め込まれた。なんと贅沢な時間だっただろう。彼らと同じ時を生き、一緒に戸惑って笑って泣いた3日間。がむしゃらな彼らの姿に胸がいっぱいになった。


(関連:稲垣吾郎・草なぎ剛・香取慎吾、21年ぶりに森且行と共演 グループ脱退当時の本音明かす


■3人が起こしたインターネットテレビの革命


 「新しい地図」と名付けられた3人のプロジェクトは、Webを中心にこれまで彼らが足を踏み込んだことのなかった世界を開拓していく道のりそのもの。SNSを始めた彼らは、新しいオモチャを手にした少年たちのように遊びまくり! そんな彼らに優しく使い方をレクチャーする芸能人ブロガーやインスタグラマー、ユーチューバーたち。その姿は、新しい世界で「 一緒に遊ぼうよ」と、手招きして迎えてくれるように見えた。彼らの新たな一歩を見守ったゲストは100組以上。3人の人徳を証明するような数字だ。


 爆笑問題や関根勤、キャイ~ンら、過去に共演してきたお笑い芸人たちが番組の進行をサポートする姿は、何よりも頼もしく感じた一幕だ。『ホンネテレビ』は、生放送で行なわれるがゆえのハプニングや、ゆるさ、そしてヒヤヒヤする場面ももちろんあった。なかには、「おふざけがすぎる」と言われかねような企画も。だが見ているうちに、この雰囲気こそ、 いつの間にか地上波では許されなくなった遊びの部分なのかもしれないと感じた。何が起こるかわからないヒリヒリするような展開は、ある意味古き良きテレビを彷彿とさせたからだ。


 大掛かりな爆破をしたり、 パニック覚悟でゲリラロケを敢行したり……“こんなことして大丈夫?”な企画は、地上波放送ではなかなか見なくなった。だが、『ホンネテレビ』 では、そんな企画が次々と待ち受ける。少し目を離すと「今どういう展開?」という少々乱暴な流れもあったが、視聴者同士がコメント欄でコミュニケーションを取り、途中参加組の合流も助ける。番組のツメの甘ささえも、視聴者たちが補い合っていくことができるのは、インターネットテレビならでは。


 また、途中で進行に困った香取が視聴者のTwitterで意見を求める場面もあった。直接出演者と視聴者が通じることができるのも、彼らにとっては新しかったことだろう。視聴者は参加する喜びを、出演者は伝わっている手ごたえを感じられる。そんな楽しみを、今回の番組で多くの人が発見できたのではないだろうか。


■旧来と未来の架け橋となる40代アイドルに


 綾小路きみまろが登場したとき「ネットの番組に出るのは初めて。生きてる時代が違うから」という発言をしていた。綾小路きみまろといえば、“中高年のアイドル”。彼やそのファンの世代の中には、インターネットの進化に追いつけないと距離を置いてしまっている人もいるかもしれない。今や、小学生の将来の夢としてユーチューバーが上位ランクインしているという現実にジェネレーションギャップを抱く人も少なくないだろう。


 ひと昔前は家族みんなで1台のテレビを囲むのが常識だった。だが、スマホで一人一人好みの動画が楽しめる時代に。日々触れる情報が異なれば、同じ話題で楽しめることも少なくなる。だが、世代を超えて愛される3人が今回ネットの世界に飛び込んだことで、多くの人が新しい世界を受け入れるきっかけを持てるようになったことだろう。


 また、今回、彼らは同時間帯に放送されている番組、いわゆる“裏番組”に出ないという業界の常識の枠をも超えた。11月5日の夜7時からは、香取&草なぎがパーソナリティを務めるレギュラーラジオ『ShinTsuyo POWER SPLASH』(bayfm)もあったのだが、こちらには有村昆がピンチヒッターとして登場。『ホンネテレビ』のクライマックスを飾る3人のライブを実況放送して、一緒に楽しむという粋な展開を見せたのだ。


 これまで親しんできたものも、新しいものも、柔軟に楽しんでみようよ、エンターテインメントなんだから! そんな姿勢を体当たりで見せてくれた。もちろん、新しい道は未整備ゆえに、転ぶこともある。番組中に草なぎがYouTubeに上げた大型実験動画も、大失敗に終わった。だが、失敗はそこで終わりではなく、「次こそは」と上を向いて頑張れるスタート地点になる。失敗も楽しめる余裕こそ、次の進化を生むのだと、彼らの姿勢から感じた。


■選択に迷わないのは、好きなことだから


 『ホンネテレビ』と銘打った本番組で、最も3人がホンネで語ったのは、かつて共にSMAPとして活動した森且行との語らいの時間だろう。実に21年振りとなる共演。森はSMAPがトップアイドルへの階段を駆け上がっていた真っ只中に、オートレーサーになる夢を追って脱退した。


 弟のように可愛がられていた香取は当時を思い返し、「暗い道でひとり泣いたりしたの覚えてる。“アニキー!” みたいな感じ。アニキが急に夢叶えるとかいってひとりいなくなっちゃうみたいな」とホンネをぶちまけた。そして、選択を後悔したことはないのかと聞いた。それは、自らの意志で新しい道を歩み始めた今、感じた不安をアニキにぶつけたくなったのかもしれない。すると森は静かに「何回もあった。うまく走れなくなったときとか、優勝できなくなったときとかに……でも、まだ楽しんでるかな。好きなんだろうね、オートレースが」と語るのだった。


 大人になるほど、失敗やリスクを恐れてがんじがらめになっていく。時として、ひとつの成功が次の一歩を踏み出す足かせになることもある。だが、そこで立ち返るべきは、好きかどうかというシンプルな原動力。それさえあれば、新しいことも何歳からだって始められる。もちろんしんどいことも多いが、それも含めて楽しむことができたら……そんなに幸せなことはないだろう。


■最後に感じさせられた、彼らの持つ“歌の力”


 72時間、ほぼ不眠不休でカメラの前に立った3人が、クライマックスで見せてくれたのは、72曲のメドレーライブ。星野源の「恋」、欅坂46の「サイレントマジョリティー」、 米米CLUBの「君がいるだけで」、THE BLUE HEARTSの「青空」、斉藤和義「歌うたいのバラッド」など世代を超えたヒットソングを歌い上げる。


 汗だくになり、声も枯れ、まさに疲労困憊。しかし、観覧するファンとハイタッチしたり、肩を組んだりと実に楽しそうに歌う。3人が選曲したという72曲は、いずれも前に前にと進むことを歌う曲ばかり。71曲目に歌われた坂本九の「上を向いて歩こう」では、香取が思わず声を詰まらせるシーンも。すると、ファンが自然と歌い始める。


 「ずっとずっと仲間だから、応援しています」エンディングロールで再び登場した森が3人に伝えた言葉には、新しい地図のファンを示すNAKAMAと同じ“仲間”という言葉が使われていた。この想いは、かつてのメンバーもファンも変わらない。


 72時間の放送を終えてみると、稲垣のブログはアメーバブログの中で3日連続1位を記録し、草なぎのYouTube動画は再生数536万回以上、香取のInstagramはフォロワー数100万人以上、総いいね!数は日本1位に輝いた。そして、番組関連ワードでTwitterのトレンド入りしたのは100以上。なかでも“森くん”というワードが3時間以上も世界1位になった。「“森くん”で獲ったのが1番うれしい」と笑う3人。それは、誰かを喜ばせることが彼らの好きなことであり、骨の髄までエンターテイナーだということを改めて思い知らされる瞬間だった。


 <きみのいちばん好きな瞬間を いまから、アップするよ>小西康陽が作詞作曲した番組のテーマソング「72」が、今も頭の中を流れている。『ホンネテレビ』は終わったが、彼らと遊ぶ楽しい時間はまたアップされる。そして、まだ誰も見たことのない風景へと誘ってくれることだろう。“新しい地図”は開かれたばかりだ。(佐藤結衣)