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星野源、『コウノドリ』第4話で見せた不器用な優しさーーおたがいに正しい医師たちの衝突

2017年11月04日 10:43  リアルサウンド

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 『コウノドリ』(TBS系)第4話では、帝王切開後の自然分娩、TOLACを希望する妊婦の蓮(安めぐみ)の出産が描かれる。産科医にはなりたくないと言っていた研修医の吾郎(宮沢氷魚)は、蓮の出産で初の前立ちを経験し、出産、命に対する考え方が大きく変わる。そして、四宮(星野源)が彼に対して厳しく当たっていた理由が明らかになる。


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 TOLACとは、帝王切開既往のある妊婦が経膣分娩を試みることを言う。入院期間の短縮や疼痛の軽減などのメリットもあるが、子宮破裂などの危険も伴う。どのように赤ちゃんを産むか。妊婦の思いを尊重したい医師たち。またしてもサクラ(綾野剛)と四宮は意見を対立させる。実際、妊婦が自然分娩を希望しているとはいえ、ペルソナチームは人員不足にあり、TOLACの希望を優先するのは難しいというのが四宮の意見。それに対し、サクラは「人が少ないから余裕がないから妊婦の希望に添えないなんて根本が間違ってるんじゃないかな」と意見を対立させる。妊婦のこと、家族のことを誰よりも考えているからこその意見の対立。考えていることは一緒であり、どちらの意見も正しいのだ。


 サクラは蓮の陣痛の様子からこのままだとお産が進まないと判断し、帝王切開を選択する。手術に移り、サクラは第一助手に吾郎を指名。吾郎は「僕は産科医になるつもりありませんから」と自己紹介で宣言したように、思ったことをハッキリ言ってしまう“ゆとり世代”の医者。産婦人科医院の院長の息子であることから、四宮から“ジュニアくん”と呼ばれている。意識の低さから四宮に愛ある鞭を受けていた吾郎だったが、前立ちを経験したことで出産への思いが大きく変化する。妊婦の赤ちゃんが無事生まれた瞬間、マスクをしていても分かるほどの笑顔で「おめでとうございます! 本当におめでとうございます!」と喜ぶ吾郎の姿が印象的だ。手術前、吾郎は自分の意見として四宮へ帝王切開を力説していたが、四宮から「まだ切らなくてもいいものを、なんでわざわざ切る必要がある。そんなの優しさでもなんでもない。それで生まれて、お前は心からお母さんに『おめでとう』って言えるのか」とサクラの気持ちを尊重した意見を返されていた。だからこその、吾郎の「おめでとう」は妊婦にも視聴者の心にも届いたのだろう。


 「家族の幸せそうな顔は特別でした」「患者さんに『おめでとうございます』って言えるのはいいですね」そう言って吾郎は一つ成長し、研修医を終え新生児科へと移動していった。四宮は最後まで「優しさにもほどがあると思うけどな」と吾郎に冷たい態度を取る。しかし、それは優しさの裏返し。実は、四宮は研修医時代にジュニアくんと呼ばれていた“初代ジュニアくん”。つまり、四宮も産婦人科医院の息子だったのだ。吾郎に期待を寄せているのは四宮も同じ。「もう戻ってこなくていいからな。せいぜい頑張れよ。ジュニアくん」と四宮は吾郎に告げる。どこまでも天邪鬼な態度の四宮にサクラは「よっ。初代ジュニアくん」と茶化し、初代ジュニアくんは「ふっ」と一言、微笑んで見せる。四宮の不器用な優しさが光った第4話だ。(渡辺彰浩)