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座間9遺体事件、「事故物件」化した現場アパートはどうなる? 不動産プロの見方

2017年11月02日 18:23  弁護士ドットコム

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神奈川県座間市のアパートの一室から、9人の遺体が発見された事件。インターネット上では早くから、事件現場となったアパートの場所や物件の情報がやりとりされていた。連日、テレビではアパートの外観が放送され、不動産探しサイトの掲載情報から築年数や間取り、家賃も割り出されている。


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入居者が殺害されたり、自殺や孤独死したりした場合は「事故物件」と呼ばれる。心理的にそこに暮らしにくい要因のある物件として認められており、不動産の売買や賃貸の際には、買主や借主への告知義務が発生する。そうした事故物件ばかりを掲載しているサイト「大島てる」には10月30日、このアパートの入居者と思われるユーザーから、「引っ越しの手配を進めている」という書き込みがあり、入居者のストレスもかなり大きいと推測される。


ここまで凄惨な事件現場として知られるようになってしまった物件は、すぐに借り手がつくとは考えにくい。そうした場合、一般的に不動産業界ではどのように扱われるのだろうか。不動産コンサルティング会社「さくら事務所」会長、長嶋修氏に聞いた。


●アパートを建て替えたとしても「事故物件」の告知義務あり

「こうした物件の場合、建物がそのままだと借り手がつかないために売却し、建物を取り壊して新築するというパターンがあります。ただ、たとえ建物が新しくなっていたとしても、敷地内であったことですので、不動産売買する際にはきちんと事件や事故があったことを告知しなければいけません」と長嶋氏は説明する。


通常は、事故物件は宅地建物取引業法47条1号により、借り手の判断に重要な影響を及ぼす事柄をわざと告知しないことは禁止されており、心理的瑕疵(キズ)のある物件として告知義務が伴う。さらに告知義務期間に明瞭な決まりはなく、50年前に起きた殺人事件現場の物件でも、告知すべき瑕疵があるとした判決例もある。


「あるいは、すぐに建て替えてコストをかけられないとして、建物を壊して更地で売るということも考えられます。ただし、その場合の価格は通常であれば5~7割下がりますが、どこの不動産業者も、殺人事件が起きた物件を扱った経験はそうそうありません。取引相場はあってないようなものです。心理的、気分的なものになってしまうので、もしも売りに出されたとしても、買い手の言い値で応じることになるのではないでしょうか」


事件はアパートの一室で起きたが、報道によると全12室のうち、まだ他の部屋に5人ほど入居しているという。自分が住んでいるアパートで事件や事故が起きて、心理的瑕疵が発生、引っ越ししたいと希望した場合、その費用は入居者自身が負担しなければならないのだろうか。



「オーナー側が負担しなければならないという法的な義務はないので、オーナーと賃貸人との関係で、どのような話し合いをするかでしょう。ただ、オーナーの温情で、たとえば『老朽化しているから、立ち退いてください』といった場合に、お見舞金や引っ越し代金を渡すケースはあります。それにしても、私は25年間、不動産業界で物件を見ていますが、ここまでのケースは珍しいです」と長嶋氏は話している。


(弁護士ドットコムニュース)