10月29日にイタリア・ムジェロで開催されたフェラーリのイベント"フィナーリ・モンディアーリ"において、サーキット走行限定の実験車輌XXシリーズの最新モデル、新型『フェラーリFXX-K Evo』がワールドプレミアされた。
2005年に始まったこの"XXプログラム"は、これまでも次世代プロダクションモデルの研究・開発プログラムに特化して開発されたXX車両により重要な役割を果たしてきており、これまでの『FXX』および『599XX Evo』仕様と同様に、この新型『フェラーリFXX-K Evo』にも、F1をはじめ、GT3、GTE、そして自らの名を冠したワンメイク選手権専用のチャレンジ車輌など、フェラーリがさまざまなサーキットレースで培ってきた革新的なコンセプトが惜しみなく注がれている。
これまでのモデルと同様、ロードユースに向けて登録・ナンバー取得することが不可能な他、専用プログラム以外のどのサーキット・カテゴリーのホモロゲーション取得も不可となる生粋の実験車両という性格を持つマシンは、HY-KERS(運動エネルギー回生システム)と6.2リッターV型12気筒ICEの組み合わせで、システム総合出力1050cv(約1035PS)/900Nm以上の出力を発生。
スタビリティ・コントロールや高性能ABS、EF1-Tracなどのトラクションコントロールや第3世代となる電子制御デフ"E-Diff-3"などの各種電子制御デバイスを搭載しながら、F1での経験をベースとした革新的なカーボンファイバーコンポーネントの製造技術を導入することで、固定式リヤウイングをはじめとした新デバイスを装備したにもかかわらず、現行FXX-Kよりも軽量に仕上げることに成功している。
マラネロのエンジニアたちが1年にわたり綿密なCFD(流体解析)シミュレーションとウインドトンネル実験を重ねた結果、『フェラーリFXX-K Evo』のエアロダイナミクス性能は、GT3およびGTEレース車輌に極めて近いダウンフォース値を獲得。
ダウンフォース係数は従来比で23%向上し、ベースとなるロードゴーイングカー比で75%増に匹敵する数値となり、時速200Kmで発生するダウンフォースは640kg、最高速度域では830kgを超える領域に到達している。
そのダウンフォース発生に貢献しているのは、リヤに装着されたツインプロファイルの固定ウイングと、アクティブ・リヤスポイラーのシームレスな連携によるもの。
可変スポイラーは制御ユニットとその可動範囲を緻密に解析・設定することで、 ダウンフォースとドラッグの最適化を図る役目を担い、ツインプロファイル・リヤウイングを支持するセンターフィンはふたつの仕事を担当。ひとつはヨー角が小さい時のスタビリティを確保するバーチカルフィン。 もうひとつは、3枚のデルタ・ボーテックスジェネレーターのステーとしての機能となる。
このボーテックスジェネレーターは、 ラジエターからボンネットに抜ける排熱気流よって発生する乱流を整え、ウイングへ理想的な気流を供給。同時にここでダウンウォッシュ(吹き降ろし)を生成して、ツインプロファイル・ウイングで発生するダウンフォース量を10%も増加させている。
その他、ディフューザーの性能に関連するホイールアーチ後方のバイパス・エアベントも拡大され、ホイールからの後流を確実に引き抜くことで乱流を効果的に処理し、ロスを削減することでここでも5%のダウンフォース増を達成した。
増大したリヤのDFに最適化するためフロントエンドの造形も見直され、ヘッドライト下のエリヤを深く内側にえぐったフォルムに変更し、ここに垂直ターニングベーンを備えた2つのフリック(フィン)とフロントホイール前方の追加エアインテークを装備。FXX-K比で10%増のDFを獲得し、このノウハウはGTモデルとも相互にフィードバックされている。
さらにプロトタイプを彷彿とさせるキャビン内には、F1由来のパドルシフトを装備した新型ステアリングホイールにKERSマネッティーノが設けられ、コクピット右側のリヤ・ビデオカメラ・スクリーンも大型の6.5インチ仕様に。
ここにはより明確かつパフォーマンスに直結するデータおよび車輌状況など、 最新バージョンのテレメトリーシステムのデータが表示され、ドライバーは多彩なスクリーン・オプションを選択することで、 KERSの状態、 計測タイムなどを確認できるようになっている。
5000kmに及ぶ開発テスト、そして1万5000kmの信頼性テストを経て、2018/19シーズンのXXプログラムでの主力として走行を開始する予定の『フェラーリFXX-K Evo』は、2018年3月から10月までの間に9回のサーキット走行を予定。来季の"フィナーリ・モンディアーリ"にも参加し、その成果も発表される予定となっている。