F1シーズンを転戦していると、いろいろな人との出会いがある。そんな人たちに、「あなたは何しに、レースに来たのか?」を尋ねる連載企画。今回は、ルイス・ハミルトンの実母カーメン・ブレンダ・ラーバレスティアと、マネージャーのマーク・ヘインズだ。
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メキシコGPで4度目のタイトルを獲得したルイス・ハミルトンはレース後、さまざまな会見が予定され、すべてのメディアイベントが終了して解放されたのは、チェッカーフラッグを受けたから3時間半後の午後6時すぎのことだった。
ハミルトンが解放されるのを今か今かと待っていた人がいる。ひとりは実母のカーメン・ブレンダ・ラーバレスティア。
ハミルトンが2歳のときにカーメンは夫のアンソニーと離婚。ハミルトンが10歳になるまで女手ひとつで育て上げた。その後、アンソニーがリンダ・ニコラスと結婚し、ハミルトンはアンソニーに引き取られた。
だが、その後もハミルトンとカーメンの関係は続き、2015年の11月にはハミルトンがロンドンで盛大な誕生パーティをカーメンのために開催して話題となった。
じつはカーメンは、メキシコGPに来る前、アメリカGPからサーキットに駆けつけていた。
「今年サーキットに来るのは、初めて。去年のアブダビGP以来だわ」というカーメン。
もちろん、昨年も今年も、タイトルを獲得に備えての訪問だった。即年のアブダビGPでは惜しくもタイトルは獲得できなかったハミルトン。今年も、スタート直後に接触して厳しい展開となったが、カーメンが見守る中、粘りに粘って、見事タイトルを確定させた。
もうひとりは、マネージャーのマーク・ヘインズだ。いまでこそ、ハミルトンのマーケティング関連のマネージメントを行なっているヘインズだが、99年にはジェンソン・バトンらを抑えて、イギリスF3選手権を制したこともある元レーシングドライバー。現役を引退した後は、マルシアでドライバーのコーチ役を務め、昨年からハミルトンのマネージャーとなった。
じつはヘインズは、昨年の12月にトト・ウォルフの自宅で開かれたミーティングに参加していたひとりだった。
このミーティングは「言いたいことをすべて言い合うことができた濃密な2時間半だった」とハミルトンが語るように、ハミルトンとメルセデスにとって重要な会議だった。出席者はハミルトン、ウォルフ、チーフレースストラテジストのジェームス・バレス、そしてヘインズの4人。いかにヘインズがハミルトンとチームから信頼されていたかがわかる。
そのような経緯があったからこそ、ハミルトンにとってもヘインズにとっても、今回のタイトル獲得には特別な思いがあったのだろう。普段、モーターホームやホスピタリティハウスでの撮影は許可しないハミルトンがこの日は珍しくホスピタリティハウス内で撮影に応じた。それはヘインズを讃えようとするハミルトンなりの感謝の印だったのではないだろうか。