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アート界の大物にもセクハラ嫌疑 5千人超のアート関係者が公開書簡に署名

2017年11月01日 21:21  CINRA.NET

CINRA.NET

「Not Surprised」Facebookページより
■米の大手アート雑誌の発行人に対するセクハラ告発

映画界で性的暴行被害の告発が相次ぐ中、アート界でも声が挙がっている。

10月25日、アメリカの現代アート雑誌『Artforum』の元従業員である女性が、同誌の同発行人であるナイト・ランデスマンから性的嫌がらせを受けたとして訴えを起こした。この女性は在籍中だけでなく、退職後も数年にわたってランデスマンから性的嫌がらせを受けていたという。ランデスマンは訴えの後、『Artforum』誌を辞職している。

■アート関係者による公開書簡「Not Surprised」 セクハラは「驚くに値しない」

これを受けて10月30日に150を超えるアート関係者の連名による公開書簡がウェブサイト「Not Surprised」に掲載された。

論文『なぜ偉大な女性芸術家はいなかったのか?』など、フェミニズムの視点から論評を展開し、10月29日に逝去した美術史家リンダ・ノックリンに捧げられる形で公開されたこの声明は、「We are not surprised.(私たちは驚いていない)」という一文で始まる。

書き手はアーティストやキュレーター、編集者、教育者、ギャラリスト、インターン、学者、学生、ライターといったアートの仕事に携わる人々。これまでに「権力を持つ人に触られ、傷つけられ、嫌がらせをされ、子ども扱いされ、蔑まれ、脅され、威圧されてきた」が、権力やキャリアに響くことなどを恐れて口をつぐんでいた、と綴っている。

さらに「驚かないこと」として、キュレーターが性的な見返りを求めて展覧会の開催や支援を申し出ること、ギャラリストが所属アーティストの性的暴行を美化し、矮小化し、隠ぺいすること、ランデスマンがキャリアの支援を約束すると言いながらアートフェアのブースで身体を触ってくることなどを挙げながら、「Abuse of power comes as no surprise(権力の濫用は驚くに値しない)」と記し、「これ以上黙らない」と宣言した。

■シンディ・シャーマンやミランダ・ジュライも含む5千人超が署名 「セクハラ」の定義も

「Abuse of power comes as no surprise」は、「Not Surprised」のサイトのトップに掲載されているジェニー・ホルツァーの1982年の作品タイトル。
書簡の署名者はサイト公開から増え続けて5千人を超え、ホルツァーやシンディ・シャーマン、ドミニク・ゴンザレス=フォルステル、マリリン・ミンター、バーバラ・クルーガー、ミランダ・ジュライ、ローリー・アンダーソン、ココ・ファスコといったアーティストに加え、ニューヨーク近代美術館、グッゲンハイム美術館、パレ・ド・トーキョーなどの著名美術館やギャラリーの職員、さらには『Artforum』の職員も名を連ねる。

また「Not Surprised」は「セクシャルハラスメント」という言葉の定義を記したページを設けており、セクシャルハラスメントは多くの場合、力のある者から立場の弱い者に行なわれるため、被害者にとっては告発するリスクが高く、またこのリスクは公表するのが恥ずかしいといった感情を伴う、と指摘している。

■発端はアートの世界で働く女性たちのグループチャット

英『Guardian』などの報道によると、この声明はメッセンジャーアプリWhatsApp上のグループチャットが発端となった。『Artforum』の件を受けて、アートの世界で働く女性たちがセクハラについて議論を交わしていたチャットが発展し、チャット上で多くの参加者が自身の経験を語り始めたことから、「Not Surprised」のアイデアが生まれたという。

膨大な数の人々が賛同の意を示したこの公開書簡は現在、署名の受付を締め切っており、次のステップに移るとしている。公開書簡の最後はこう締めくくられている。

「私たちはもはや黙らされたり、無視されたりできないほどに大勢いる。これまで経験し、目撃してきたことを考えれば、この書簡は驚くに値しない」