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牧野任祐インタビュー「欧州のドライバーは“ガムシャラ度”がハンパなかった」

2017年11月01日 19:52  AUTOSPORT web

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2017年、FIAヨーロピアンF3に挑戦した牧野任祐
FIA-F4での戦い、そして全日本F3で印象的な速さをみせ、2017年から渡欧。ハイテックGPからFIAヨーロピアンF3に挑戦した牧野任祐。F1を目指し新たな環境に身を置いた牧野に、今季の戦いを振り返ってもらった。

──2016年に参戦した全日本F3から、FIAヨーロピアンF3に初参戦となった2017年。同じHFDPドライバー(※)がF2(松下信治)やGP3(福住仁嶺)に参戦するなか、ヨーロピアンF3に参戦を決めた理由を改めて教えてください。
牧野任祐(以下牧野):まずは、F1ドライバーになるためのスーパーライセンスに向けて、取得するためのポイントが高いこと。そしてヨーロッパの代表的なサーキットを転戦するので、コースを知るという勉強の意味でも、このヨーロピアンF3に参戦することになりました。

──初めてのヨーロッパでのシリーズ参戦を終えて、ヨーロピアンF3について率直な感想を聞かせてください。
牧野:ドライバーの“ガムシャラ度”がハンパない。とにかくレースが激しい、そのひと言につきますね。去年までは全日本F3に参戦していましたが、レベルも、レースの激しさもまったくの別物と言っても過言ではないと思います。このヨーロピアンF3は、巷でもそう呼ばれるように、F1に向けたフォーミュラカーレースのなかでも世界一レベルの高いレースだと実感しました。

──このヨーロピアンF3には、フェラーリやメルセデス、フォースインディア、マクラーレン、レッドブル等々、数々のメーカー育成ドライバーが参戦していましたが、ホンダのプログラムに参加している身としては意識しましたか?
牧野:意識しないと言ったらウソになりますね。やはりこのシリーズに参戦している全員がF1ドライバーになることを目指して必死で戦っている選手ばかりなので、速さだけではなく、誰もがドライビングのレベルが高いうえに、全開でアタックしてくるなかで自分のパフォーマンスをどう発揮するのかという、チャレンジし甲斐がある高いレベルです。

──ノリスリンク戦では接触により手首を負傷。スパを欠場し、その後のニュルブルクリンク戦からグッと調子が上がってきましたが、牧野選手のなかで意識としても変わったのですか?
牧野:開幕から最初の3ヵ月は最悪でしたね。自分のパフォーマンスをどう出すか、ということさえも苦戦していました。ノリスリンクで手首を負傷して、その次のスパも断念せざるを得なくなりましたが、前半戦のレースを振り返り、自分をじっくりと見つめるきっかけにもなりました。ニュルからはいつにも増して積極的に担当エンジニアと徹底的に話し合い、根本的にセットアップを変更し、前半戦までのドライビングスタイルを見直して、その向上に努めた結果、このニュルから少しずつ手応えをつかみ始めました。

■プロドライバーになるには食生活も大事
──それでは“F1ドライバーを目指す20歳の青年”の日常について教えてください。
牧野:ホッケンハイムの最終戦後にはいちど日本に帰国しますが、基本的にはイギリスのオックスフォードでひとり暮らしをしています。レースが続くとなかなか難しいのですが、それ以外では語学学校に通い、担当フィジオの厳しい指導の下でトレーニングを重ねています。このヨーロピアンF3ではテストの回数が非常に制限されているので、レース以外で実車をドライブできる機会はほとんど無いので、マクラーレンのシミュレーターに乗る機会もいただきました。

──日本在住のドライバーには専任のフィジオがついてトレーニングをするというのはまだ少ないと思うのですが、具体的にはどんな指導をしてくれるのですか?
牧野:体を作るという意味で、フィジカル面のトレーニングメニューと、食事の面で厳しく管理をしてもらっています。もともと料理が苦手で、チームに加入したばかりのころは日本から持参したレトルト食品などで簡単に済ませていたのですが、それを知ったフィジオにものすごく叱られました(笑)。それ以来、毎日毎食の食事を写真に撮ってフィジオに送り、それについても指導が入ります。なので必然的に、外食もほとんどせずに毎日自炊をしています。今ではプロのレーシングドライバーになる上での食生活も、大切な要素だと実感しています。

──今季はスーパーGTに参戦する松浦孝亮選手が牧野選手に帯同していましたが、どんな役割だったのでしょうか?
牧野:松浦さん自身の日本でのレースと重ならない限り帯同してもらって、コーチ兼アドバイザーとして僕を支えてくれている存在です。

──では、ふたたびレースの話に戻しますが、この激しいFIAヨーロピアンF3で戦うために、大切なことはなんでしたか?
牧野:速い、ドライビングのスキルがある……ということは、このヨーロピアンF3では全員にとって当然のことだと思います。僕が所属するハイテックGPからは4名のドライバーが参戦していますし、チームメイトが第一のライバルになるという環境です。その高いレベルのなかで、前に出てパフォーマンスを発揮できるようになるには、強靭なメンタルが大切だと感じました。ヨーロッパの代表的なサーキットを転戦し、激しいレースを繰り広げ、自分自身のドライバーとしての引き出しを増やすことがF1ドライバーに向けての第一歩でしたね。

──来季も引き続き、このヨーロピアンF3に挑戦する予定ですか?
牧野:まだ来年の事は決まっていませんが、シーズンが終わってから日本へ帰国し、ホンダさんやいろいろな方と今後のことについて話し合う予定です。

※:HFDP=ホンダ・フォーミュラ・ドリーム・プロジェクト