10月26~29日に行われたWRC世界ラリー選手権第12戦ラリーGBで、自身初のWRC優勝を遂げたエルフィン・エバンス(フォード・フィエスタWRC)。若手有望株と期待されてきたエバンス成長のきっかけはWRC2への“降格”と王者セバスチャン・オジエの存在だった。
2013年にMスポーツからWRC最上位クラスデビューを果たし、2014年からフル参戦しているエバンス。長年、期待の若手と評されてきたが、思うような結果を残せず。2016年はMスポーツ陣営には留まったものの、WRC2クラスへ“降格”された。
2016年シーズンは開幕2連勝を含むシーズン3勝を挙げてランキング同率2位を獲得。今年、悔しさをバネにして最上位クラスへ返り咲いた。
そのエバンスは2017年シーズン第5戦アルゼンティーナの最終SS直前まで総合首位につけてWRC初優勝に王手をかけたが、最終SS18で0.7秒差で首位から陥落。初優勝を逃している。
迎えた母国イギリスで行われる第12戦ラリーGBでは、最上位クラスで唯一、エバンスのみが使用しているDMACKタイヤが路面コンディションにマッチしたこともあり、序盤から首位を快走。最終的に2位に37.3秒もの大差をつけて、初勝利を手にした。
イギリス・ラリー選手権時代も含めると、通算17度目のラリーGB出走で勝利を手にしたエバンスは「今回の勝利は長年の夢だったかって? どうだろうね。あまり先のことは考えないようにしているんだ」とコメントしている。
「確かに僕と(コドライバーの)ダン(ダニエル・バリット)は、いつかラリーで優勝できると思っていた。ただ、ラリーGBで勝つことになるとは思いもしなかった」
「ラリーGBで勝利するにはかなり時間がかかると考えていたんだよ。だから、本当にスペシャルな結果だと思っている。僕はここ(イギリス)で育ったし、今も住んでいるんだからね」
「2016年のラリーGBでは、(WRC2にも参戦しなかったため)ほとんど観客として参加していた。あの時点で2017年シーズンについては、何も決まっていなかった」
「最上位クラスに参戦するチャンスはあったし、その目標のために全力を注いでいたけど、確実なことはなかった。タフな時間だったよ。あの時から、自分の個性をもう少しアピールしていくことにしたんだ」
イギリス・ウェールズのテレビ局『S4C』でレポーターを務め、エバンスのキャリアを追っているエミール・ペンランも「昨年、WRC2クラスに“降格”されたことが転機になった。今年は、これまでとはまったく違い、毅然とした態度をみせるドライバーになっていた」とコメント。
また、これまでエバンスを育ててきたMスポーツのマルコム・ウィルソン代表は、今年セバスチャン・オジエがチームメイトになったこともエバンスに好影響を及ぼしたと語っている。
「セバスチャンとの時間が影響したことは明白だ」とウィルソン。
「エルフィンは自分自身に、もっと自信を持つことができている。(走行後の)デブリーフィングでそれを痛感するよ。昔は言葉数も少なく、黙っていることが多かったが、いまはしっかりと意見を主張するようになった。これは素晴らしいことだ」