文部科学省は10月末、2016年度の「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」の速報値を発表した。
いじめの認知件数は32万3808件。2015年度に比べて約10万件増加し過去最高となった。いじめの大半は学校側のアンケート調査などで発覚しており、本人からの訴えや学級担任が発見するケースは1~2割ほどだ。
「本人からの訴えで発覚」は依然として少ない
2016年にいじめの認知件数が大幅に増加した要因には、文科省が今年3月に「いじめの防止等のための基本的方針」を改定し、「けんか」や「ふざけ合い」もいじめの定義に含むようになったことで、認知が進んだことが考えられる。
同年に認知されたいじめの内訳を見ると、小学校が23万7921件(前年度15万1692件)、中学校が7万1309件(同5万9502件)、高校が1万2874件(同1万2664件)、特別支援学校が1704件(同1274件)だった。小学校での認知が顕著だ。
いじめ発見のきっかけは、「アンケート調査など学校の取り組みにより発見」が51.6%で半数を超える一方で、「本人からの訴え」(18.1%)や「学級担任が発見」(11.6%)は少ない。いじめられた児童生徒の相談先は「学級担任」が77.7%で最も多く、「保護者や家族等」(23.9%)を引き離している。
いじめの態様は、「ひやかしやからかい、悪口や脅し文句、嫌なことを言われる」が62.5%で最多。「軽くぶつかられたり、遊ぶふりをして叩かれたり、蹴られたりする」(21.6%)、「仲間はずれ、集団による無視をされる」(15.3%)が続く。被害者が生命の危険を伴う「重大事態」は400件発生し、前年度より86件増えた。
小中高から報告があった自殺した児童生徒数は244人。このうちいじめを原因として自殺した児童生徒は10人だった。
小中学校ともに不登校件数は4年連続で増加、教員との関係が原因になるケースも
小中学校で年間30日以上欠席する不登校の件数は、13万4398人だった。内訳は、小学校では3万1151人、中学校では10万3247人で、どちらも4年連続で増加している。
不登校の要因を本人に関する要因でみると、「不安の傾向がある」が31.1%で最も多く、「無気力の傾向がある」(30.2%)、「学校における人間関係に課題を抱えている」(16.8%)が続く。
学校に関する要因では、「いじめを除く友人関係をめぐる問題」が25.1%でが一番多いが、「教職員との関係をめぐる問題」で不登校になるケースもあった(2.7%)。実際、今年3月に福井県の町立中学2年の生徒が自殺した事件では、教員との関係に焦点が当てられた。教員の誤った指導などに生徒が不信感を抱くことがあるため、一層の改善が望まれる。