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伊勢谷友介、“悪い男”が似合うワケ 『監獄のお姫さま』イケメン社長役の強さと弱さ

2017年10月31日 16:12  リアルサウンド

リアルサウンド

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 世間からはみ出した(完全に隔離された)女子刑務所の中という過酷な状況でもたくましく生きる女たちを描くドラマ『監獄のお姫さま』。とにかくキャストが豪華で、どこに転がるか分からない展開とともに、遊び心満載の会話の行方にハラハラさせられる。


参考:『監獄のお姫さま』は『カルテット』に続く“行間案件”? 小泉今日子が向き合う罪と毒


 そして、どう考えてもうまくいかないのでは? と思わせ、グダグダな感じで始まった彼女たちのリベンジ計画だったが、復讐のターゲットである伊勢谷友介演じるイケメン社長・板橋吾郎の誘拐に成功。本ドラマは、捨て身で暴走しがちな女優陣の魅力もさることながら、女たちに囲まれ、ムダにセクシーな伊勢谷が、とにかくハマり役なのだ。


 それぞれ立場も、育った環境も、生き方も違う個性的な女たちの唯一の共通点が罪を犯して同じ刑務所に入ったこと。そして、そこで罪を憎む厳格な女刑務官(満島ひかり)と出会い、連帯感が生まれ、1人の男への復讐という同じ目標を持ったことで強い絆が結ばれる。


 不器用だったり、肝心なときに冷静に行動できなかったり、勝気すぎて自爆したり……世の中を上手に渡り歩けないタイプの女たちの共通の敵として、そして復讐のターゲットとして、伊勢谷は圧倒的な存在感を見せている。


 映画『3月のライオン』後編で原作ファンから“妻子捨て男”と揶揄され、嫌われる川本三姉妹のサイテーの父親役・甘麻井戸誠二郎を演じたときも、彼は複雑な印象を残していた。男の色気だけではない、哀愁を漂わせ、完全に憎みきれないダメな父親として存在感を放っていた。身勝手で、無責任。自分の都合で愛情を利用するところが許せないが、そんな生き方しかできないことが哀れとも思える。


 色気に必要なのは、強さや美しさだけではなく、弱さや不完全さといったどこか欠落した部分に宿る影のようなものではないか、と彼の演技を見て感じた。伊勢谷は強さと弱さのコントラストが絶妙なのだ。


 『監獄のお姫さま』では、サンタ姿を披露し、姉御(森下愛子)に「分かってるんでしょ! イケメンは。どういう角度で、どういう仕草でどういう声出せば女がズキュンとくるか。大正解よ!」と言わしめた。第3話では、さらにセクシーシーンが増えるようでますます楽しみだ。


 女の愛情や信頼を裏切るということは、その前に愛情や信頼を獲得する魅力を持ち合わせているということ。ただの悪い男、ふてぶてしい男ではその価値もない。そのうえで、主人公を奮い立たせる役目、女の敵としてそれだけ強く惹きつける男の魅力を感じさせなければ成立しない。こんなにも嫌われ役、女を敵に回す役がハマる伊勢谷友介に注目しないわけにはいかない。(池沢奈々見)