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のん、ロックシンガーとしての高いポテンシャル 女子美学園祭ライブを観た

2017年10月31日 11:52  リアルサウンド

リアルサウンド

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 女優・創作あーちすととして活躍する「のん」が10月29日、女子美術大学・相模原キャンパスで開催された『女子美祭 2017 てんやわんや』に出演した。


 この日のライブは、事前に「キャンパス内にソーラー・パワー・トラックで乗り付け、突撃ライブを敢行」とアナウンスされていたが、あいにくの雨模様となり、急遽キャンパス入り口でのライブに変更に。それでも特注の鉛蓄電池に溜まった電気を使って、万全のパフォーマンスを繰り広げた。


(参考:のんが語る、“この世界の片隅に”見つけた新たな道 「かっこ悪いことって時々、必要なんです」


 開始時刻に登場したのんは、観客に手を振ったあと「おれ、のん! ハッピーハロウィン! 今日はみなさん、楽しんで行ってくれ!」と叫び、「実はのんは女子美のオープンキャンパスに来たことがあったんだ! だから今日は来れて嬉しいぜ!」と明かし、観客やキャンパスの学生をざわつかせる場面も。この日は、オープンキャンパスに訪れていた親子連れの姿も多く見られ、次々と足を止めて彼女のライブを見守っていた。


 今回のバンドメンバーは、ゆず、スキマスイッチ、川嶋あいなどのサポートを務める若森さちこ(Dr)、Superfly、堂島孝平、古川雄大、Buono!などのライブに参加している岩崎なおみ(Ba)、シンガーソングライター・ヒグチアイの実妹であり、コレサワなどのライブでギターを弾くヒグチケイ(Gt)の3人(のん曰く「のんシガレッツ」と呼ぶらしい)。


 のんはそんな彼女たちの奏でるダイナミックなサウンドに合わせ「女子美入りたかったぜ!」とシャウトし、サディスティック・ミカ・バンドのカバー「タイムマシンにおねがい」を1曲目に披露。オルタナティブなギターロックのサウンドにあわせ、のん自身もギターをかき鳴らしながら、凛とした歌声で名曲を力強く歌い上げる。その様子からは、ロックシンガーとしての高いポテンシャルが垣間見られた。


 2曲目は11月22日発売予定のデビュー曲であり、高野寛がプロデュースを手がけた「スーパーヒーローになりたい」。この日初披露となった同曲は、どっしりとした岩崎のベース、抜けのいい若森のドラム、どこかセンチメンタルなヒグチのギターリフにあわせ、<変身させてベイベー スーパーヒーローになりたい 新しい歌を待ってる><遠くへ連れてよ オーバードライブ効かせて ささくれた音で踊らせて>と、高らかに宣言してみせる楽曲だ。


 その後、バンドメンバーを紹介し、コール&レスポンスで雨に濡れる観客たちを励ましたのんは「音楽始めるにあたって、レーベル<KAIWA(RE)CORD>を立ち上げました。次にやる曲は<KAIWA(RE)CORD>の初音源で、RCサクセション『I LIKE YOU』のカバーです」と紹介。「仲井戸“CHABO”麗市さんがギターでレコーディングに参加してくださって、『(忌野)清志郎も嬉しがってると思うよ』と言ってくれて。あまり泣かないタイプなんですけど、グッときました。大切に歌いたいと思います」と語り、「I LIKE YOU」を熱唱。アカペラで<そんなに考えることはないさ 初めに感じたままでいいさ そのままでジューブン素敵さ> と歌う姿は、一度表舞台から姿を消し、ありのままの姿で再びカムバックした彼女の人生を思わせる。


「私が作詞作曲した曲です。通称『石ころの歌』」


 そう言って披露したのは、自分で作詞作曲した「へーんなのっ」。ギターをガシガシ弾き倒し、変則的なメロディに乗せ、<「へーんなのっ」って言ってやれ>と歌い上げる。どこか掴みどころのない歌詞も曲も、彼女のキャラクターがしっかりと反映されているといっていいだろう。どこかTHE COLLECTORSやフラワー・カンパニーズとも共通するようなサウンドには、聴き心地の良さがある。


 「3曲が入ったシングルが11月22日に発売されるぜ! いい夫婦の日ですが、いい夫婦な人もそうでない人も買ってください!」と語り、最後にもう一回「スーパーヒーローになりたい」を披露。観客も2度目ということで、思い思いに踊ったりシンガロングしたりと、彼女の奏でる音楽を楽しんでいた。


 この日印象的だったのは、パワーコードをジャキジャキ弾きながら歌う彼女の凛々しい姿。むやみやたらに“ロック”という言葉で括るのは良くないかもしれないが、この活動に至るまでの経緯や彼女のスタンス、ギターをカッコよく弾くのんを見て、そう形容する以外ないように思えた。そして、彼女が数々のベテランロッカーから愛される理由も少しだけわかる気がした。(中村拓海)