助成金や還付金など、お金にまつわる国の制度は、その存在を知り、申請して初めて支給対象になる場合が多い。10月最後の週末、ツイッターで話題になった「両立支援等助成金 出生時両立支援コース」もそのひとつだ。
同制度は、男性従業員が育休を取得すると助成金として数十万円が企業に入る、というもの。厚労省が、男性従業員の育児休業取得推進のため2016年に設けた制度だが、事業主(経営者)向けであることもあり、知らない人が多くいたようだ。紹介ツイートは7万件以上リツイートされている。
中小企業だと57万円の助成金、「生産性要件」満たすとさらにアップ
制度の利用には様々なハードルがある。まず、対象となる男性従業員が育休を取り始める前までに、企業内で、男性の育休取得を促す取り組みを行っている必要がある。例えば、男性の育休に関する管理者向け研修などが該当する。
さらに、育休を取り始める日から過去3年以内で、14日以上(中小企業は5日以上)連続して育休を取得した男性社員がいないことや、育休は子どもが生まれてから8週間以内に取得することなども条件にある。
これらをクリアし、育休を取得した男性社員が1人でもいた場合、2か月以内に申請することで、中小企業の事業主は57万円、それ以外の事業主は28.5万円の助成金を貰える仕組みになっている。次年度以降は、その年度で初めて育休を取る男性がいた場合に14.25万円が支給される。
さらに厚労省が定める「生産性要件」を満たした場合には、57万円から72万円、28.5万円から36万円、14.25万円から18万円に増額される。
助成金の用途は自由だが、厚労省の担当者は「仕事と育児の両立支援が目的なので、労働者への研修実施など、男性の育休が取得しやすい企業風土作りの経費に使ってもらえたら」と、環境整備への投資を期待していた。
昨年度の申請件数は1581件「1つのコースとしては多いほう」
ただ、申請にかかる手間は小さくはない。申請に必要な書類の種類や量は、必要最低限に抑えるなどの努力はしているというが、「用語の難しさもあって、なじみにくいのは確か」と担当者はこぼす。会社の事情によっては、人事・労務担当が申請業務に不慣れな場合もあるので、その場合は
「各都道府県の労働局職員が相談を受け付けているので、不明な点はそちらに聞いてみて欲しい。社労士に代行や代理をお願いしている事業所も多いと聞くので、お付き合いのあるところに話をしてみるのも良いと思う」
とのアドバイスだった。
出生時両立支援コースへの申請件数は、昨年度の1年間で1581件。一概に比較は出来ないものの、「1つのコースとしては多いほうではないか」という。担当者は、「男性の育休取得はニュース等でも多く見るようになっている。取得率もわずかに上がっているため、申請件数は今後も増えるのではないか」との見方を示していた。