NIGO®が「ア ベイシング エイプ®(A BATHING APE®)」から離れて4年半。「UT」のクリエーティブディレクションや、今月発表された加熱式たばこ「アイコス」とのコラボレーションなど、さまざまなジャンルへと可能性を拡げている。裏原ブームから約20年が経った今、ブランド廃止・売却などが続く現在のファッション業界をどう見ているのか。
1990年代からストリートファッションシーンを牽引してきたNIGO®。ア ベイシング エイプ®だけではなく「グッドイナフ(GOODENOUGH)」や「アンダーカバー(UNDERCOVER)」といった"裏原系"と呼ばれるブランドが台頭した時代は、新作の発売と共に行列を作り人気アイテムはプレミア化するなど、ブームを巻き起こした。
それから約20年が経った今、ファッション業界は大きく変化。インターネットの普及により、SNSで影響力を持つインフルエンサーなどデジタルの場で活躍する人が圧倒的に増えたが、NIGO®は現代のファッションシーンにおいて注目している人は「特にいない」という。ア ベイシング エイプ®についても「僕がやっていた頃から何も変わっていない」と意見を述べる。一方で、自身がオンラインのクリエーティブを手掛ける中国のメディア「YOHO」のイベントで現地を訪れた際には「中国の若者はいかに自分をカッコよく見せるか」というファッションに対する熱を感じたといい、今の日本人にはその貪欲さがなくなっていると指摘する。
また小売の形も変わり、オンラインで服を買うことが珍しくない時代になった。自身もアマゾンのヘビーユーザーだというNIGO®は、ECの便利さを認めつつも、ファッションにおけるECの普及は代償があると捉える。「"着て買う楽しみ"が必然的に減る。以前は買えなくて当たり前だったものが、今は買えて当たり前になり、それは良いことでもあるが購買体験に価値がなくなってしまった」。
NIGO®は活気を失いつつある日本のファッションシーンに対して、「アンチでも反逆児でもいい。デジタルとリアルを両立できるような人が現れて、何かしらムーブメントを起こしてくれたら、日本のファッションシーンは面白くなるのでは」と次世代への期待を寄せる。自身においても「進化して、もっと先へ行きたい。クリエーターにも賞味期限があると思っているので、『今できる良いもの』を作って残していけたら」と、今後も新しいことに挑戦していく姿勢を示している。