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ライゾマティクスが示した“1000日後”の東京五輪 「Perfume Lighting Project」を振り返る

2017年10月30日 13:02  リアルサウンド

リアルサウンド

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 10月28日、東京オリンピック開催1000日前を記念した番組『内村五輪宣言!~TOKYO 2020開幕 1000日前スペシャル~』(NHK総合)が放送された。番組では“東京”“2020年”をテーマに椎名林檎、トータス松本、HUMAN ERROR(浮雲/小雨/林檎)、ゆず、Perfumeがパフォーマンス。中でもPerfumeのステージは、彼女たちのライブに欠かせない存在であるライゾマティクス・真鍋大度チームとコラボしたスペシャルパフォーマンスとなった。番組に出演したメンバーは、小雨こと演出振付家のMIKIKO含めリオ・デジャネイロ オリンピック/パラリンピック閉会式のフラッグ・ハンド・オーバーセレモニーに携わったメンバーばかりで、今回の番組は彼らが東京オリンピックにも何らかの形で関わる布石なのでは、と注目を集めていた。


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 Perfumeは、番組でのステージに向け、「Perfume Lighting Project」として事前にTwitterと番組ホームページで「1000日後はどんな自分になりたいですか?」というテーマでメッセージを募集。Twitterでハッシュタグ「#nhk1000days」を付け、位置情報をオンにしてツイートすると、特設サイトに掲載されている地図の該当箇所が光るという仕組みとなっていた。特設サイトではツイートと連動して徐々に地図の光る箇所が増えていったり、光るPerfumeの姿が完成していく様子が見られ、この仕組みがパフォーマンスにどう反映されるのか、ファンの間でも話題を呼んでいた。


 当日の放送では、渋谷の街を舞台にPerfumeが「TOKYO GIRL」を披露。ツイートによって完成された光るPefumeが、現実の3人の姿に変わるという演出からスタートした。リアルタイムで現実とコンピューター上のカメラの位置を連動させるダイナミックVR(2016年の『第67回NHK紅白歌合戦』(NHK総合)でも使用)によって3人がエレベーターで踊っているように見せたり、3人の動きを残像で表現するなど、ライゾマティクスの技術の結晶のようなステージに。番組では本番前の様子も映っていたが、舞台装置がスクリーンだけだったことからも、映像で奥行きを表現していることが分かるだろう。そんなテクノロジーを集結させたステージでありながら、エレベーターや東京の街から「TOKYO GIRL」のMVを想起させる演出となっていたのが印象的だった。


 そして集まったツイートはPerfumeの周囲を取り囲む青い縦長の光の中に現れ、タイムラインのように下から上へと文字が流れていき、最後には特設サイトにもあった日本地図の上にツイートが右から左へ表示されていた。前者では一つ一つの文字を認識することはできても文章として読むことは難しく、後者ではあまりに文字が細かいので、目を凝らし文字を拡大しなければまず文章を読むことはできない。つまりツイートを“日本語”として読ませるのではなく、演出の一つとしてビジュアル的に扱う。まさに東京オリンピックに向けて、世界を意識した試みだったように感じられる。


 今回の「Perfume Lighting Project」はSNSを通じた視聴者との双方向的なやり取りでありながら、ツイートをビッグデータとして演出に組み込むという取り組みであった。2020年にどんなSNSが主流になっているのかは分からないが、今回の経験を生かした演出が東京オリンピックでも見られるかもしれない。またダイナミックVRの技術、そしてPerfumeのパフォーマンス力の向上によって、2016年の『NHK紅白歌合戦』でのステージよりも、さらに現実と仮想空間の境目が見えなくなっていたのは気のせいではないだろう。こうした技術が日々確実に進化を遂げていることを改めて感じる。1000日後、VRやARと音楽がどうコラボしていくのか。様々な可能性を予想し、期待しておきたい。(村上夏菜)