メキシコGP初日。午後2時からのフリー走行でトロロッソのガレージをのぞいて見ると、なにやら物々しい雰囲気が漂っている。ピエール・ガスリーのマシンに取りついている約10人のメカニック全員が、マスクと手袋を装着して作業しているのである。
万一の感電に備えてゴム製手袋をするのは、珍しくない。しかしセッション中のメカニックが揃いも揃ってマスクをしている光景は、ほとんど見たことがない。近くにいたチーム広報に訊くと、「パワーユニットがトラブってるとしか、今はわからない」とのことだった。
その後、ホンダの某エンジニアとこの話題になった。
「隣のガレージで、あんなことになってましたからね。驚きました」
普通は、マスクはしない?
「見たことないですねえ。少なくともマクラーレン・ホンダでは、一度もしたことないですし。バッテリーが過熱すると化学反応を起こして、有毒ガスが出る恐れがあるんですね。黒レベルといって、赤を通り越して一番ヤバい状態なんですが、でもこのマスクでは、それはとても防げそうもないし」
そこでルノーに出かけて、チーフエンジニアのレミ・タファンに訊いてみた。するとレミは、「ああ、あれね。ERS(エネルギー回生システム)の作業をする時は、そうするものだよ」と、こともなげに言う。
でも全員マスク装着って、あまり見たことないけど、と尋ねると「そうかい?」で、おしまい。
そこでもう一度ホンダに戻ってレミの話を伝えると、「そうなんですか。よくわからないですねえ。このマスクはブレーキのカーボンダストや、パーツを削る作業での粉塵防止に使うやつですね。でも全員が付けてるってのは、ちょっと不思議だなあ」
ということで真相は今も不明。その間にもガスリーは翌土曜日のFP3で(おそらくエンジントラブルで)またも止まってしまった。マスクの謎は機会を改めて、トロロッソに直接訊いてみることにしましょう。