2017年10月29日 10:23 弁護士ドットコム
大阪の市立高校で、男性非常勤講師が教員免許を持っていない教科「世界史A」を教えていたことが、9月に発表された。
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大阪市教委によると、講師は「公民」の免許しか持っていなかったが、「世界史A」なら教えられると誤解。学校側も、免許のコピーのチェックが不十分だったという。生徒は今後、免許を持つ別の教師の補習を受けるという。
教員免許をめぐっては、こんな話題も。朝日新聞は8月、九州で教員が不足しているとする記事を掲載した。あまりにも人が少なくて、退職した教師にも声がかかるほどだという。記事では、元社会科教師に対し、教育委員会が「臨時免許を出すから、数学を教えて欲しい」と連絡してきた話が紹介されている。
大阪では教員が免許を持っていなくて、生徒が補習になる一方、九州では免許を持っていないのに、授業をするよう請われる。一体どうしてなのか。免許を持っていない科目を教えるのは違法ではないのだろうか。宮島繁成弁護士に聞いた。
ーー免許を持っていない教科を教えることはできる?
教員は、学校の種類ごと、中学校・高等学校の場合は、教科ごとの免許が必要です(教育職員免許法)。例外は教育職員免許法とその付則で定められています。
このため、公民の免許しか持っていない高校教師が世界史Aを教えたり、社会科免許しか持っていない中学校教師が数学を教えたりすることはできません。
もっとも、高校の公民科と地歴科は誤解が生じやすい事情があります。平成元年改訂の学習指導要領までは、「社会科」という一つの科目だったためです。そのころに社会科免許を取得した教師は、現在も公民科と地歴科を教えることができます。
ーーでは、免許を持たない教科を教えるのは違法か?
教育職員免許法は、「相当の免許状を有しないにもかかわらず教育職員になった者」を30万円以下の罰金としています。ただ、すでに教員になっている者が、免許を持っていない教科を教えた場合はこれには当たりません。
ちなみに、ケースは違いますが、免許状を偽造して提出した場合は有印公文書偽造罪、同行使罪になりえます。
教員が必要な免許を持っていなかった場合、学校は卒業単位が不足しないよう補講を行うことが多いようです。ただ、最終的には校長の判断になります。また、卒業した後で遡って卒業が取り消されることはありません。
ーーだとすると、九州の事例はどのように解釈できるのか?
免許を持っていない教科を教える方法のひとつとして、「臨時免許状」があります。普通免許状を有する者を採用できない場合に限り、教育職員検定試験を経て授与されます。この免許状があれば、社会科教員が数学を教えることもできます。
しかし、ほとんど使われていない地域もあります。なので、記事のエピソード通りであれば、九州の教員不足はかなり深刻だと言えるでしょう。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
宮島 繁成(みやじま・しげなり)弁護士
日弁連子どもの権利委員会。いじめ問題対策プロジェクトチーム、教育法制問題対策ワーキンググループ。いじめや体罰など学校問題のほか、法教育、スポーツ問題などに取り組んでいる。中学校及び高校の教員免許を有している。
事務所名:ひまわり総合法律事務所
事務所URL:http://www.himawarilaw.com