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六本木交差点のカメラで「通行人」の属性をリアルタイム推定…プライバシー問題は?

2017年10月29日 10:23  弁護士ドットコム

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東京の六本木商店街振興組合とNECは10月20日、六本木交差点に設置したカメラの映像から、AIを活用した画像解析技術を用いて、通行人をの移動方向や性別・年代、人数を24時間リアルタイムで推定する実証実験を開始したと発表した。


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NECの発表によると、通行人の属性情報を基に、商店街に設置したデジタルサイネージに表示するコンテンツをリアルタイムで切り替えて、最適な情報配信のあり方を検証するという。


このような実験でネックとなるのが、プライバシーの問題だが、今回の実験では、通行人個人を特定できる情報を保存せず、カメラで撮影した映像はデータ分析後に即廃棄するという。


画像解析技術を用いた分析は今後、様々な場面で広がることが想定されるが、プライバシー保護の観点から、どのような点に注意する必要があるのか。小林正啓弁護士に聞いた。


●技術とプライバシーの変容に注意を払う必要がある

「平成29年5月30日に施行された改正個人情報保護法では、顔画像が個人情報に該当することはもとより、目の位置や骨格などを数値化した特徴量情報も、特定の個人を識別できるものである限り、個人情報に該当します。


これに対して、性別や年代、歩行の方向などの属性情報は、特定の個人を識別できるものではないので、個人情報には該当しません」


今回の実証実験には問題がないのか。


「今回の場合、NECのプレスリリースには、撮影画像は属性情報生成後に即時破棄すると書かれています。撮影画像が、システムの記憶装置に保存されず、撮影とほぼ同時に属性情報が生成され、その直後に破棄されているのであれば、個人情報の取得にはあたらないので、個人情報保護法違反の問題は発生しないと考えます。


もっとも、個人情報保護法違反の問題が発生しないからといって、プライバシー保護法上、問題が無いとまでは断言できません。近い将来、歩行者の属性を分析し、性別や年代に合わせた広告(デジタルサイネージ)が行く先々に表示されれば、人びとは、自分の行動が常に監視されている、と感じざるを得ないでしょう。それは、プライバシーを侵害されている、と意識を刺激するかもしれませんし、自由な行動を萎縮させるかもしれません。


逆に、技術が普及すれば、人びとはカメラシステムを空気のように当たり前と感じるかもしれませんし、プライバシーの意識そのものが変わるかもしれません。適法と違法の境目に線を引くことを生業(なりわい)とするわれわれ法律家は、技術の進歩とプライバシー意識の変容に、常に注意を払う必要があると思います」


(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
小林 正啓(こばやし・まさひろ)弁護士
1992年弁護士登録。ヒューマノイドロボットの安全性の問題と、ネットワークロボットや防犯カメラ・監視カメラとプライバシー権との調整問題に取り組む。
事務所名:花水木法律事務所
事務所URL:http://camera.hanamizukilaw.jp/