2017年10月28日 11:13 弁護士ドットコム
上場企業が守るべき行動規範を示したコーポレートガバナンス・コードの適用などを通じて、企業統治改革の機運が高まっている。
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企業統治の中でも重要なのは、社外取締役の役割だ。各社とも、社外の監視の目と意見を取り入れることにより、長期的な企業価値の増大につなげようとしている。
ただ、日本には、その役割を担うことのできる社外取締役が不足していると言われている。社外取締役にふさわしいのはどのような人材なのだろうか。北川ワタル税理士に聞いた。
社外取締役として「ふさわしい人」は会社の規模や業態によっても変わるものだとは思います。ただ、社外取締役の役割論から考えて基本的に備えておくべき資質というものはいくつかあります。それらの資質は「心・技・体」という3つの視点で整理できるのではないかと考えています。
まずは「心」。これはマインドとも呼べるのかもしれませんが、一般株主の利益保護を念頭に置いて行動できるという資質です。たとえば、コーポレートガバナンス・コードには、独立社外取締役の役割と責務として、会社と経営陣・支配株主との利益相反を監督することに加え、経営陣・支配株主から独立した立場で少数株主の代弁者になることが掲げられています。
株主保護といっても支配株主だけではない、マイノリティの利益まで考えられるという正義感にも似たマインドが要求されているという訳です。
次に「技」。社外取締役には、企業価値の向上に資する助言と取締役会を通じた経営の監督という役割が求められています。つまり、経営に対するアドバイスができる資質とコンプライアンスなどに関してチェックができる資質の両方が要求されているということです。
これは非常にレベルの高い要求事項ではありますが、経営的視点や経営センス、マーケティング、組織、ファイナンス、会社法を始めるとする法律などに関する知見は、社外取締役にとって重要なものと考えられます。
最後に「体」。これは資格要件とでも言うべきものです。たとえば、過去10年間に会社または子会社の業務執行取締役等でなかったなど、会社法2条15号に定められた要件を満たす必要があります。平成26年の会社法改正で社外取締役の要件はより厳格化されているため留意が必要です。
また、「李下に冠を正さず」の言葉に倣い、「法的に問題ない」というだけでなく、外観的に見ても一般株主と利益相反のない者を社外取締役候補として選定すべきといえるでしょう。
【取材協力税理士】
北川ワタル(きたがわ・わたる)税理士
公認会計士、税理士、経営革新等支援機関。監査法人にて上場企業、学校法人、金融機関等の監査、リファーラル業務、IFRSアドバイザリー、IPO支援、デューデリジェンス等に従事したのち独立。財務・会計・税務を中心とした幅広いサービスを提供。『図解最新 税金のしくみと手続きがわかる事典』など監修。
事務所名 : 北川ワタル事務所
事務所URL: http://www.sharedmemo.com/snannerhozon/
(弁護士ドットコムニュース)