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勤務先すべてでパワハラに遭った女性(26)の悲惨な体験談 「怒号と暴力の中、淡々と電話対応」「親からどんな教育を受けてきたの?」

2017年10月28日 10:01  キャリコネニュース

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度々話題になる「パワハラ」。一度も被害にあったことがないという人もいるが、働く先々でパワハラにあうという人もいる。安藤みな子さん(仮名・26歳)は、「いままで働いた会社すべてで何かしらのパワハラを受けてきました」と話す。

学生時代にアルバイトをしていたコールセンターでは、「直接的なパワハラではありませんが職場環境がひどすぎました」と語る。

「毎日社長が、社員に『こんなことも出来ないのか』『土下座しろ、俺に恥をかかせるな』と怒鳴っていました。2~3日に1回はグーで殴ったり、社員が座り込んでも蹴ったり踏んだりしていました」

年齢の近い女性社員が手をあげられている場面に何度も遭遇し、自分も殴られるのでは、と脅えながら業務に従事していた。

「ある日、ストレスから電話対応中に意識を失いました。後からそのときの様子を聞くと『椅子から転げ落ちて倒れているのにずっとしゃべり続けていたよ』と言われました。暴力が横行している横で淡々と仕事しろっていうのもハラスメントなんだなと感じましたね」

その1週間後にバイトを辞めた。当時を振り返り、「バイトだったから殴られることもなく、すぐ辞めることもできたと思う」という。

「でも正社員なら辞められなかったかもしれない。この件から正社員として働いて、業務をこなしていくことに自信がなくなってしまいました。卒業後はバイトか派遣社員として働いています」

飲み会に参加したら「私は正社員だけど、あなたはバイト。立場をわきまえて」

卒業後はエンタメ施設のバックヤードで3年間働いていた。ミーティングでは安藤さんだけ上司の正社員30代女性に毎回名指し――チームの人数は少ないのに名前を覚えてもらえず"バックさん"呼ばわり――で怒られていたという。

「毎回私だけが『バックさんさあ、髪ボサボサだしちゃんと化粧してんの!?』と怒られるところから1日が始まります。念入りに身だしなみを整えるようにしましたが、怒られるのは私だけ」

同僚からも心配されるほど集中攻撃をされていたという。その職場は、情報共有がされていないことも問題だった。

「ある日、交代の人が来ないから休憩せずに連続して作業をしていました。その部屋は熱中症になりそうなくらい暑くて、以前別の社員から『暑かったら扉を開けてたままでいい』と言われていました」

しかし上司は「なんで開けて仕事してんの、お客さんに見えちゃうでしょ!」と激怒。他にも会社の飲み会に参加したとき、偶然隣になった社長に数回話しかけられただけなのに「派遣なのに社長に近づこうとしすぎ」「私は正社員だけど、あなたはバイト。立場をわきまえて」と言われた。

サイコパス上司「常識なんて普通に生きていれば身につく」

次の派遣先である企業では、契約社員の40代女性に執拗に攻撃された。

「受付業務をしていたんですが、初日に言われたことをメモしていたら『また教えるから大丈夫だよ』と言われました。でも質問すると『自分で考えてやって』と突き放され、考えてやると『なんで聞かないの!?』と怒られ……何をしても正反対のことを言われるんです。私の正気を疑われたこともあります。気が狂いそうでした」

基本的に仕事中は2人きりのため、誰にも相談できず、毎日絶望していたという。

この異様な状況に気付いたのは同じ派遣会社の先輩だった。安藤さんはそこで自身がパワハラ被害者であると初めて気付き、派遣会社に相談した。しかし数日後、派遣会社から「企業側から『安藤は仕事を覚える気がないから契約更新が難しい』と言われている」という電話があった。

「派遣会社には先輩からも口添えしてもらっていたのですが……とりあえず、いまは仕事をがんばるしかないと思いました。でも、その翌日また理不尽な怒られ方をしたので、反撃に出ることにしました」

理不尽に怒られた安藤さんはトイレにいくフリをしてレコーダーを取りに行き、ポケットに忍ばせてカウンターに戻った。するとまた「どうして私が教えていないやり方でするの?」「なんで『このやり方を教えてもらった』って嘘つくの?」と何度も言われたという。

実際、安藤さんは契約社員の女性に教わった通りに作業をしていたため、話は平行線だ。極め付けには、

「常識なんて普通に生きていれば身に着くものなのに、安藤さんはあまりにも無さすぎる。親からどんな教育を受けてきたの? 安藤さんは何でも聞いてくるからそのたびに教えてきたけど、1から10まで言わなきゃわかんない? 仕事なんだから一つ一つ舐めないで真剣にやりましょう」

と人格否定された。安藤さんは「しかもこのやり取り、人が行き交う受付カウンターで行われているんですよ。常識って何でしょうね」と話す。

「パワハラをする人は『自分がパワハラ加害者だ』とは思っていません」

翌日、契約の件で安藤さんは企業側に呼び出された。会社としては「契約社員の女性から話は聞いたが、安藤さんからも話が聞きたい」とのことだ。

「今までされたことをすべて伝えました。会社は聞いていた話と違うので驚いているようではありました。最後に『昨日人格否定されたやり取りを録音しました』と言うと急に態度が変わったんです。音源を聞いていないのに、突然謝罪されました」

安藤さんは「逆に録ってなかったらどうなっていたか、考えたくもありません」と振り返る。面談では謝罪の場を設けること、契約社員の女性を再教育することが伝えられた。しかし契約については「更新しないことを曖昧に、でも強く」言われたという。

「『何も教えられていない派遣』と『一通りは仕事を把握している契約社員』なら、後者を雇い続けますよね。契約期間はあと1か月ありましたが『来月分の給料は支払うから来なくていい』と伝えられました。派遣の中途解除って、次働くときに支障が出そうで嫌だったんですけど……」

後日、問題の女性には企業側立ち合いの元、謝罪をされた。しかしその内容も、

「指導していく過程で、私が『親の教育がよくない』と言ったように感じられたみたいですけど、そう取られてしまう発言をしないように気を付けま~す」

というもので、安藤さんとしては「本当に舐め腐った謝り方でしたよ」と納得がいかない。しかし怒りを抑え「再発しないようにだけお願いします」と伝えた。契約社員の女性は「本当に申し訳ございませんでしたぁ~」と言うのみで、最後まで反省の色はなかった。

行く先々でパワハラに遭う安藤さん。加害者たちに思うことを聞くと、「私もいつか加害者になるんじゃないかと怖い」と話す。

「パワハラをしてきた人たちは『自分がパワハラ加害者だ』とは思っていません。だから私も何かきっかけがあれば、同じようなことを人にしてしまうかもしれない。もしかするとすでに私も加害者になっていたのかもしれません。そう思うと怖いです」