トップへ

ロイック・デュバル インタビュー「もてぎでのDTMデモランは僕が立候補したんだ!」

2017年10月27日 18:42  AUTOSPORT web

AUTOSPORT web

ロイック・デュバル
2006年から12年まで日本で活躍した後、アウディでLMP1をドライブ。2016年をもってアウディが突如LMP1活動を終了した後もアウディに残留し、今季は初となるDTMドイツツーリングカー選手権に参戦したロイック・デュバルに、自身のDTMデビューイヤーと、“古巣”であるスーパーGTについて聞いた。

──あなたにとって初めてのDTMでのシーズンを振り返ってみて、いかがでしたか?
ロイック・デュバル(以下LD):はっきりいってとても厳しく、難しいシーズンだった。DTMに参戦すると決まってから、ある程度は難しいシーズンになることは予想していたものの、こんなに苦しい状態が長く続くとは思わなかったよ。ある程度レースのテンポをつかみかけた頃には、シーズンが終わりかけていたという状態だった。ザントフールトを境にマシンのパフォーマンスを活かせてきて、やっとDTMで戦えるレベルになった気がする。コンペティティブなLMP1や日本のスーパーGT、スーパーフォーミュラで戦っていて、ずっとハイパフォーマンスカーをドライブしていたけど、DTMに来ると、例えばタイヤのグリップ力や空力など、ある意味で“ステップダウン”したマシンを操縦することがどれだけ難しかったかを痛感したね。パフォーマンスが低いマシンから、ハイパフォーマンスマシンをドライブすることはすぐに習得できるけど、逆のパターンはとても厳しい。ドライビングのスタイルから、何から何まで変える必要があったのは難しかった。

──厳しいシーズンながらも今季はザントフールトで2位を獲得。初ポイント、初ポディウムを飾りましたね。
LD:ザントフールトに限らず、どのレースでも勝つためだけに全力で挑んでいたが、空回りの連続だった。ザントフールトではさまざまなコンディションがうまく重なり、フリープラクティスからかなりいいタイムを出せていたんだ。自身のパフォーマンスに対する手応えを感じた。チームにもやっと貢献ができたと思うし、できればあの時のようにシリーズ全部のレースでトップ集団を走れるようになりたいね。

■来季もDTM参戦は決まっている。でも日本にも戻りたい!
──初のDTMシーズンが終わったばかりで時期尚早かもしれませんが、来季のシートについてはすでにアウディと話し合いをしていますか?
LD:すでにアウディとの2018年の契約は済ませているので、来季もDTMに継続して参戦するよ。前進したり、後退したり、一歩ずつ新たな気持ちで今季のDTMではレースやマシンを学び、経験を積んだと思う。今季はアウディの圧倒的な勝利で終えたように、アウディRS5 DTMのパフォーマンスは素晴らしいし、担当のエンジニアとも理解し合っている。来季に向けての課題は自分自身でよく分かっているので、シーズンオフのテストではそれを確認して、少しでも来年はいいレースをしたいと願っている。勝てるチャンスは平等に与えられているのだから、僕なら成し遂げられると信じているよ。

──噂によると、あなたは「スーパーGTに復帰したい」という願いをもっているとも聞いていますが、日本のチームともコンタクトを取っているのですか?
LD:すでにアウディと契約を済ませているからね。DTMの来季のカレンダーにもよるけれど、スケジュール的にスーパーGTとDTMを両立するのは難しいと思う。日本ではとても素晴らしい経験を積んだし、お世話になったチームには特に良くしてもらったよ。数々のファンタスティックなレースを戦ってきた。日本のサーキットのレイアウトは素晴らしく、日本の熱狂的なファンにはずいぶんと支えてもらった。絶対にいつかまた日本に戻ってレースをしたいと願っているけど、残念ながらその時がいつとは確実には言えない。でもオファーがあればすぐにでも日本へ飛ぶ準備はできているよ!

──現在、あなたはスーパーGTとDTMの両方を知る唯一のドライバーですが、大きく両方のシリーズの違いを、ドライバーの立場で教えてください。
LD:まずいちばんの違いは、スーパーGTでは1台のマシンを2名のドライバーでシェアすること。DTMでは自分ひとりだけのためにマシンが用意されている。僕の個人的な意見では、チームメイトと1台のマシンをシェアする方が好きだ。レースそのものでは、DTMはスプリント、スーパーGTはセミ耐久でドライバー交代があるほか、タイヤなどでもレギュレーション上でいくつか大きな違いがある。でも、DTMとスーパーGTでそれぞれ特徴を出していて、その違いを楽しんでいるよ。ただドライバーとしては、タイヤはやはりワンメイクじゃない方がいいね。DTMでは自動車メーカーのマーケティング的な要素という意味で、レースに占めるメーカーの色がとても濃く、全チーム、全ドライバーがワークス参戦だが、日本ではそこまで強くないという点から、チームオーガニゼーションという意味でも大きな違いを感じる。

■ツインリンクもてぎではDTMマシンをじっくり見てみて!
──スーパーGTとDTMの間で長年話し合いが続けられている車両規定『クラス1』について、両国のレースを経験したあなたはどう感じていますか?
LD:世界最強のツーリングカーとGTカーが集うレースなんて、とても素晴らしいことだと思う。世界一見ごたえのある、迫力あるレースになることは間違いないよ。日独のトップコンストラクターが集い、それらのマシンが競い合うなんて、ドライバーやチーム関係者だけではなく、ファンにとっても待ち遠しくてたまらないと思う。2019年に予定されているレギュレーション統一化に向けて、DTMのホッケンハイムに日本のメーカーが来てファンへプレゼンテーションをしたよね。そして僕たちDTM側のメーカーがツインリンクもてぎに行き、日本のファンにDTMマシンをお披露目できるなんて、夢のようだ。こんな素晴らしい機会が実現するなんてとても感激したよ!

──今後の『クラス1』について望むことは?
LD:日独両国の尽力でやっとここまでたどり着いたからね。両シリーズを知るドライバーとして、双方の良いところも、クラス1になっても現在の各レギュレーションをそのまま活かしたいことも、とても理解できる。話し合うべき点はまだたくさんあるに違いないけど、両国が歩み寄って、たがいのシリーズを尊重し合いながら譲歩していく姿勢は大切だと思う。その先には必ずものすごく素晴らしいレースがあることは間違いないよね。

──11月のスーパーGT最終戦もてぎで、DTMマシンのデモ走行のドライバーを担当する予定ですか?(編注:このインタビューはDTM最終戦ホッケンハイムで収録。その後もてぎでのデモランドライバーとしてデュバルが決まった)
LD:現時点ではまだ確定ではないけど、僕としてはその役目に対して、手を挙げて立候補をしたんだ。もてぎは2010年にスーパーGTのタイトルを獲った場所だし、できればその思い出の地であるもてぎで、僕がアウディRS5 DTMを日本のファンの前で走らせたいと願っている。

──日本のファンにDTMをどうプレゼンテーションしますか?
LD:日本のファンには、まずもてぎではDTMマシンをじっくり見てもらいたいね。共通パーツがあるとはいえ、スーパーGTとはまったく違う。GT500は馬力も大きいし、タイヤグリップもまったく違うから、DTMと一緒に走行していても動きが違うことが分かると思う。DTMのマシンはエアロがスーパーGTよりも強化されているはずなので、外観的な違いも見て楽しんで欲しい。もう2019年はすぐそこに迫っている。同じグリッドで戦う日独のマシンがクラス1規定でどう変わっていくのか、その過程を日本のファンも見守りながら、スーパーGTもDTMも応援して欲しいと切に願っているよ!