F1シーズンを転戦していると、いろいろな人との出会いがある。そんな人たちに、「あなたは何しに、レースに来たのか?」を尋ねる連載企画。4年連続コンストラクターズタイトルを決めたメルセデスのホスピタリティに、良きライバルのマウリシオ・アリバベーネと、チームをよく知るロス・ブラウンがやってきた。
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アメリカGPのレース後、メルセデスのエグゼクティブディレクターを務めるトト・ウォルフが自チームのホスピタリティハウスで、定例の記者会見を開いていると、質疑応答の途中でウォルフが突然立ち上がり、「マウリシオ、入ってこいよ!」と叫んだ。
振り返ると、フェラーリF1代表のアリバベーネが立っていた。気がつくと、ウォルフが駆け寄って来ていて、目の前で握手をした後、抱き合っていた。アリバベーネはメルセデスの4年連続コンストラクターズ選手権制覇を讃えに来たのである。
メルセデスとフェラーリは、今シーズンのタイトル争いを盛り上げたライバル同士だが、この2人は個人的には普段からパドックで立ち話をするほど、仲が良く、そんな良好な関係を象徴するシーンだった。
アリバベーネが去ったと思ったら、直後にもう一人入って来た。ブラウンである。今年からF1のモータースポーツ担当マネージング・ディレクターになったブラウンだが、このメルセデスは元は言えばブラウンがオーナーを務めていたブラウンGPで、メルセデスに買収された後も2013年まで同チームの代表を務めていた。
したがって、「あなたは何しに?」も何も、古巣に帰って来たといったところか。
「このチームの素晴らしさを私はだれよりもよく知っている。ブラウンGPからのスタッフだけでなく、ジェームス・アリソンやアルド・コスタといった、最近入って来た人も私はフェラーリ時代に一緒に仕事した経験があるから、その才能は知っていた。4連覇というのは、本当にすごいことだ」
「コンストラクターズ選手権優勝というのは、一般の人たちにはあまりその価値が理解されていないようだけど、ファクトリーで仕事する何百人のスタッフとその家族にとってはかけがえのない勲章であることを私はだれよりも理解している。よくやった。本当におめでとう」
フェラーリのアリバベーネと、元チーム代表のブラウン。いずれもメルセデスの成功は、自身にとって複雑な心境のはずだが、そういう気持ちは抑えて祝福に来た2人に拍手を贈りたい。