研究者の間では、性別によって情報共有のされやすさ・されにくさが異なるようだ。ウィーン大学の研究者ら4人が今年10月、科学雑誌「Scientific Reports」に投稿した論文によると、依頼者と応答者が男性同士の時ほど、他の性別の組み合わせ時と比べ、情報の共有がされやすいことが判明した。
女性同士よりも男性同士の方が協力的という結果に
投稿論文のタイトルは「科学の共有は男性科学者同士で最も行われやすい(Sharing of science is most likely among male scientists)」。研究者の間で、作業の手間、性別、地位と、情報共有のされやすさにどんな関連があるか調べた。
論文著者の専門である比較心理学と社会的認知の分野の研究者のうち、最近論文を発表した実績のある人を対象としている。学生2人、同程度のキャリアを持つポスドク2人(それぞれ男女1人ずつが含まれる)から、発表した論文のPDFデータの送付をお願いするメールを送り、その応答率を調べた。
全体では約80%の研究者がPDFの送付に応じたが、依頼者と対応者の性別の組み合わせに着目すると、男性同士の組み合わせでは、依頼者が女性で対応者が男性、依頼者が男性で対応者が女性、両方女性同士の時よりも、明らかに応答率が高かったという。
また、手軽に対応できる論文PDFの送付に加え、実験の元データを送って欲しいという手間のかかる依頼をしたところ、結果としては約60%の研究者が依頼に応じたが、このケースでも、男性同士の組み合わせでの対応率が他の性別の組み合わせより高かった。
女性は、依頼側、対応側いずれに立つ場合も、情報共有に成功する率は男性より低かった。一方男性は、依頼者が男性であれば地位に関わらず応答しがちで、女性からの依頼には、自分と地位が同じくらいでなければ答えない傾向にあったという。
性別による違いは進化の歴史が関係している?
研究者らは、女性の応答率が低くなったのは、女性がアカデミアの世界で経験するキャリア競争が激しいため、自身の研究成果やデータを他人に見せ、出し抜かれてしまう恐怖を抱いたせいではないかと示唆する。
また、男性同士の組み合わせで情報共有率が高くなったのは、進化の歴史が関係している可能性を提示する。集団闘争で他のグループに対抗するため、結束する必要があったことの名残ではないかと見ている。
今回の結果はあくまでも、比較心理学と社会認知の分野の研究者を対象に行われたものだ。研究者らは論文中で、他の分野でも同様の結果になるかどうかや、人類一般で同じことが言えるか確かめるためには、より詳細な研究が必要だと述べている。