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NHK受信料の合憲性、最高裁で弁論「契約の自由に違反」「公共放送の維持に不可欠」

2017年10月25日 18:13  弁護士ドットコム

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NHKが都内の男性に対し、未払いの放送受信料を求めていた訴訟で10月25日、最高裁(裁判長・寺田逸郎長官)は15人の裁判官全員で構成する「大法廷」で弁論を開いた。判決日は別途発表。


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裁判の大きな争点の1つは、テレビなどの受信機設置者に対し、「契約をしなくてはならない」とする放送法64条1項の解釈だ。NHKはこの規定に基づき、番組視聴の有無などに関係なく、受信機の設置を理由に受信料を徴収している。



今回の弁論で、NHK側は、「NHKスペシャル『無縁社会~新たなつながりを求めて~』」(2011年放送)などを例に、質の高い報道番組や災害報道、放送技術の発展などの功績を強調し、国家や企業から独立した「公共放送」を維持するためには、受信料制度による安定した財源が不可欠だと、徴収の正当性を主張した。



対する男性側は、受信料を支払わないことについて、罰則や制裁などの規定がないため、放送法64条1項は法的強制力のない訓示規定、努力義務だと主張。受信料は支払わなくても良く、仮に支払いを義務だとすれば、憲法が保障する「契約の自由」などに違反すると訴えた。



男性側はさらに、NHKが受信料の公平負担を主張するなら、視聴したい人が料金を払う「スクランブル方式」を採用すべきで、経営が成り立たないと言うのであれば、「国会で別の制度を作るべきだ」と述べた。



●二審判決が支持されれば、過去数十年分の受信料請求も可能に

この裁判は、NHKの番組に不信感があるなどとして、男性が受信料の支払いを拒否したことに対し、NHKが支払いを求めて起こしたもの。裁判所は一審・二審とも、男性側に受信料を支払うように命令した。



裁判では、受信料の支払い義務のほか、(1)NHKとの契約が認められるとすれば、どのタイミングからか、(2)受信料計算の起算日はいつか、(3)支払いの消滅時効(5年)の始まりはどこになるのか、なども争点になっている。



この点、NHKは一貫して、承諾の有無に関係なく、NHKが契約を申し込んだ時点で、契約が成立すると主張している(主位的請求)。NHKは2017年9月末現在で、今回の裁判も含め、未契約者に対する訴訟を281件起こしている(29件は訴訟中)。この主張が認められれば、NHKは未払いに対し、裁判を起こさずに受信料の徴収が可能になる。



このNHKの主張について、二審の東京高裁は、「申し込み」と「承諾」という契約の原則に反するとして、NHKの主張を退けた。ただし、放送法64条1項に基づき、受信者には「承諾」する義務があるとして、判決確定日に契約が結ばれると判断している(NHKの予備的請求)。



さらに、二審判決は、受信料徴収の起算日は、NHKの規定にある通り、受信機設置の時にさかのぼると判断。加えて、消滅時効のカウントは判決確定日からになるので、消滅時効は認めないとした。つまり、原理的には、NHKが受信料を支払っていない世帯に対し、過去数十年分の金額を請求することもできる内容になっている。



男性側は、この受信料の計算方法や消滅時効の解釈についても問題があるとして、反論している。



弁論後、男性側代理人の高池勝彦弁護士は、「放送局がNHKしかなかった頃には一定の合理性があったかもしれないが、受信料制度はもう制度疲労を起こしている。これに尽きる。民間企業が税金と似たシステムで徴収するのは無理がある」と語った。



(弁護士ドットコムニュース)