トップへ

微笑み王子・吉沢亮、“中二病”のインパクト 『斉木楠雄のΨ難』で大ブレイクなるか?

2017年10月25日 06:03  リアルサウンド

リアルサウンド

写真

 今年の夏にスマッシュヒットを記録した『銀魂』につづいて、福田雄一監督が週刊少年ジャンプ連載の人気ギャグ漫画の実写化に挑んだ『斉木楠雄のΨ難』。生まれながらに超能力を持ってしまった主人公の斉木楠雄が、文化祭で起こるトラブルを未然に防ごうとして力を暴走させてしまう抱腹絶倒の展開が、100分に満たない短い尺の中にここぞとばかりに凝縮されている。


参考:小栗旬『銀魂』ヒットの要因は“脇役の濃さ”にあり? ご長寿漫画・アニメ特有の人物描写作法を読む


 とにかく原作漫画を忠実に実写化したキャラクター造形が光る本作は、ピンク色の髪をして、頭に変なもの(能力を制御する装置らしい)が刺さった状態で終始無表情の山崎賢人を筆頭に、主要キャラクターの濃さが途方もない。ものすごく可愛いのに心の声では性格の悪さを露見させる橋本環奈は何度も変顔を繰り出して自らのアイドル力を破壊し、新井浩文と笠原秀幸と賀来賢人はコミック的なキャラ立ちを活かして不思議と高校生に見えてしまう。


 その中でも、最も特殊なキャラクター性を備えているのが、主人公のクラスメイト海藤瞬を演じている吉沢亮。他のキャラの印象を簡単に忘れさせるぐらい、彼の強烈さが際立っている。端的に言えば、とてつもなくヤバいキャラクターなのだ。「中二病という病にかかっている」と劇中で言われる彼は、文化祭が闇の組織によって破壊されるかもしれないと陰謀論を語り、それを阻止するために奔走する。言ってしまえば、作品の大筋とまったく関係のないところで、まったく関係のないことを終始繰り広げて、それが何故か作品の重要な役割を果たしてしまうという得なポジションなのだ。


 裾がボロボロのワイシャツを着て、少し青みがかった銀髪。その出で立ちもなかなか“中二病”感が満載なのだが、動きひとつひとつに無駄が多く、常にジョジョ立ちのような決めポーズを見せつづける。そして、自らを“漆黒の翼”と名乗ってしまうそのキャラクター。同じクラスにいたら楠雄じゃなくても絶対に関わらないでおきたいタイプであることは間違いない。


 初日舞台挨拶の際に、“漆黒の翼”の決め台詞とポーズを再現してみせた彼は、アフレコで自分のシーンを観たときに爆笑してしまったことを明かしていた。これまでの少年漫画でよく登場してきたタイプのキャラクターを、冷静沈着で達観視した主人公が見下す部分で、セルフパロディ的な面白さを生み出す本作にとって、ヒロイックさをステレオタイプ化させて、一気にダサく作り上げた海藤瞬のキャラクターは、とてもシュールに映るわけだ。


 そんな“漆黒の翼”を演じた吉沢は、「微笑み王子」や「歩く彫刻」、「平成のアラン・ドロン」などものすごくハードルの高い異名を持つ、イケメン俳優枠のひとり。それでも、他のイケメン俳優とはまた一味違う。彼が沖田総悟を演じた『銀魂』のイベントで、主演の小栗旬が「吉沢亮になりたい」と言ってしまうほど、顔が美しいのだ。整った造形もさることながら、とにかくその美しさが輝いているのである。


 『仮面ライダーフォーゼ』の、仮面ライダーメテオ役でデビューした彼は、『アオハライド』では主人公のクラスメイトの小湊亜耶を演じ、本作と同じく山崎賢人と共演した『オオカミ少女と黒王子』ではヒロインに想いを寄せる地味なメガネ男子を演じるなど、最近の若手イケメン俳優と同じような王道をまっすぐ歩いてきた。


 ところが『銀魂』でまさかのコメディ演技を開眼させ、今回の“漆黒の翼”でさらに、その見た目とキャラクター性の絶妙なバランス感を作り出してしまう。稀代の美少年俳優が、ギャグ路線に走ってしまうというのは一見すると、勿体無いような気もする反面、大きな意外性が生まれて面白さが増すのである。


 とはいえ、来年には王道イケメン俳優路線に返り咲くので一安心。『ママレード・ボーイ』で、“岡山の奇跡”こと桜井日奈子とダブル主演を果たすことが先日発表された。数多の少女漫画が映画化される中、ついに実写化される伝説的少女漫画で彼は、甘い見た目とは裏腹に苦い部分が隠されている“ママレード・ボーイ”松浦遊を演じるのだ。原作ファンとして、こんなに楽しみなことはない。


 さらに『オオカミ少女と黒王子』につづいて二階堂ふみと共演を果たす『リバース・エッジ』では、同性愛者でいじめられっ子の美少年を演じる。これは少女漫画原作とはいえども、すこし王道から外れるタイプの作品ではあるが、非常に繊細で難しい役柄であり、彼の俳優としての真価が問われることだろう。2018年は“微笑み王子”が、今年以上の大ブレイクを果たすことは間違いない。


※山崎賢人の「崎」は「たつさき」が正式表記


■久保田和馬
映画ライター。1989年生まれ。現在、監督業準備中。好きな映画監督は、アラン・レネ、アンドレ・カイヤット、ジャン=ガブリエル・アルビコッコ、ルイス・ブニュエル、ロベール・ブレッソンなど。