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櫻井翔、30代でたどり着いたミステリアスな役者像 『先に生まれただけの僕』校長役がハマる理由

2017年10月24日 06:03  リアルサウンド

リアルサウンド

 嵐の櫻井翔が主演を務めるドラマ『先に生まれただけの僕』(日本テレビ)が、奨学金やスクールカーストといった、現在の学校を巡るリアルな問題を取り扱ったことで話題となっている。


参考:櫻井翔のコメディセンスは想像を超えていた


 櫻井が演じるのは、類まれな営業力を持つ商社マンであり、彼の勤める企業が経営する不採算の高校を立て直すために校長として送り込まれる男・鳴海涼介。実年齢と同じく、弱冠35歳で校長になったという設定で、櫻井はリアリストな一面を持つ鳴海を、知的かつミステリアスに演じている。


 教師と生徒の関係性ではなく、教師が諸問題に対してどう向き合うかを描いた点でも、かつての学園ものとは一線を画するドラマとなりそうな本作。中でもキーとなるのは、やはり主人公の櫻井翔だと、ドラマ評論家の成馬零一氏は指摘する。


「本作の脚本を手がけるのは、『HERO』(フジテレビ)や『ガリレオ』(フジテレビ)などの作品で知られる福田靖氏で、チーフディレクターは、『ゆとりですかなにか』(日本テレビ)の水田伸生氏です。福田氏の脚本は“ポップな社会派”という感じで、シリアスなテーマを軽やかなタッチで描くことに定評があります。一方の水田氏の演出は、暗めの画面で重厚に描いていくのが特徴です。そのため『先に生まれただけの僕』は、軽さと重さが同居した、独自の作風になっていると感じます。唐突に話が重くなったりするシーンは評価の分かれるポイントだとは思いますが、ドラマとしては新鮮ですね。そして、その独自の作風に、櫻井さん演じる主人公の佇まいはぴったりとハマっています。この役は彼にしかできないのではないかと思うほど、相性が良いです。


 櫻井さんは、ニュースキャスターなども務めていることから、知的で穏やかなイメージがありますが、一方でどこか腹の底の見えない感じもあるんですよね。明るくて賢いんだけれど、同時に冷たさも感じさせるというか。本作で演じている鳴海涼介はまさにそういうタイプで、一見すると合理主義的だけれど、実は生徒のことも考えているという。櫻井さん特有の、いい意味での“胡散臭さ”を活かしたキャラクターで、本作を象徴していると思います」


 また、櫻井にこうした役柄がハマるようになったのは30代になってからだと、成馬氏は続ける。


「櫻井さん含め、嵐のメンバーは20代の後半くらいから“何歳になったら大人の男性を演じるか”が、ひとつの壁になっていました。アイドルらしい童顔のため、大人の役を演じると違和感がある時期がしばらく続いていたんです。しかし、ここ数年はメンバーそれぞれ、年相応の役柄を演じられるようになってきている印象です。今回の櫻井さんも、35歳の校長という現実ではほとんどありえない役柄にも関わらず、自然に演じることができています。


 賢明な櫻井さんですから、おそらく昔から自分が何をするべきか理解していて、状況を俯瞰して見ていたのではないかと思います。演技を見ていても、それは感じられることでした。しかし、立ち振る舞いや会話のノリがついていかなくて、作品から浮いている感じが否めませんでした。ところが、2013年の『家族ゲーム』(フジテレビ)くらいから、ルックスも含めて良い感じに収まってきました。最近だと、あれくらい童顔の30代の方も珍しくないですし、かえってその雰囲気をミステリアスさに繋げることができている印象です」


 『先に生まれただけの僕』は、櫻井にとって30代の代表作のひとつとなる可能性もありそうだ。(松田広宣)