衆院選の投票が締め切られた10月22日の夜、民放各局はこぞって選挙特番を放送していた。候補者のプロフィールや、選挙運動の様子を詳しく放送するため、楽しみにしている人も多いだろう。
しかし、投票の前に放送してくれれば、誰に投票するかの判断材料になるのに、なぜ投票が締め切られた後にしか放送しないのだろうか。同日、タレントのデーブ・スペクターさんは、
「前に言いましたが、選挙終わってから候補や政党や支援団体のことを特番で見せられてもどうしろと言うんですか? 遅いだろう!全く役に立たない。メディアが公職選挙法の改正を大優先にしないなら開票特番やめて全部アニメでいいです」
と憤慨していた。
「表現の自由を濫用して選挙の公正を害してはならない」の規定が問題?
デーブさんが公職選挙法の改正に言及したのは、同法の規定のせいで、選挙期間中の報道が制限されていると考えているからだろう。同法151条の3では、「選挙に関する報道又は評論について放送法の規定に従い放送番組を編集する自由を妨げるものではない」と報道の自由を保障しているものの、
「ただし、虚偽の事項を放送し又は事実をゆがめて放送する等表現の自由を濫用して選挙の公正を害してはならない」
という但し書きがついているのだ。この「選挙の公正を害する」報道に該当しないよう、テレビ局が自粛しているとデーブさんは考えたのだろう。
ジャーナリズムや言論の自由が専門の山田健太・専修大学教授も同様の見解を示している。10月10日に放送されたラジオ番組「JAM THE WORLD」で山田教授は、この但し書きの文言に「メディアは縛られてしまっている」と解説。また同法だけでなく、放送法4条の2にある「政治的に公平であること」という規定も、メディアに対する呪縛となっているようだ。(「J-WAVE NEWS」)
キー局関係者「公職選挙法の規定は、社内ではあまり気にしていませんよ」
デーブさんのツイートは、大きな反響を呼び、
「選挙に関係なく各政党が何やっているのかしっかりと報道してほしい」
「その後の速報より事前の各党の詳細な情報提供、最高裁判所裁判官の情報が必要」
といった賛同の声が相次いでいた。
特番の中で最も平均視聴率が高かったのは、「2017衆院選開票速報」(NHK)の17.1%。民放トップの「池上彰の総選挙ライブ」(テレビ東京)も9.8%を獲得しており、関心の高さが伺える。選挙期間中の報道がもっと増えれば、有権者の判断に役立つことは間違いない。
ただ、テレビ番組が事前に政党や候補者について報道しないのは、同法とは関係がないという意見もある。ある民放キー局の関係者は、単に視聴率の問題だと話す。
「政治をエンターテイメントとしてゴールデンタイムに放送できるのは、投開票日だからこそ。普段、放送しても興味を持ってもらえません。公職選挙法の規定は、社内ではあまり気にしていませんよ」
もしそれが本当ならば、公職選挙法の改正よりも、視聴者が普段から政党や議員についての報道を求める姿勢が必要になりそうだ。